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<アーカイブ大震災>避難者続々SC在庫放出

緊急避難所となったイオン石巻ショッピングセンターの飲食コーナー。最大で約2400人が避難した=3月24日、石巻市蛇田(イオン提供)

 東日本大震災は、東北の企業や店舗に大きな打撃を与えた。未曽有の被害、混乱の中で、地域経済、市民の生活を支える企業は、どう対応したのか。復興にどう立ち向かおうとしているのか。「ドキュメント 大震災」のシリーズ第4弾では、企業の最前線で闘う人たちの「あの日」と「いま」を追う。

◎苦闘 企業の前線(1)店長の決断(石巻・大型店)

 2011年3月11日。沿岸部の大型小売店に、津波を免れた大勢の住民が避難した。宮城県石巻市蛇田のイオン石巻ショッピングセンター(SC)は、やや内陸側にあって津波が到達しなかったため、避難者が続々と集まった。その数は震災5日目の15日に約2400人に上った。店舗は指定避難所にはなっていない。通信手段が途絶え、会社の指示も仰げない状況で、問われたのは現場の判断力だった。

 「事態が想定を超えれば、災害マニュアルには頼れない」。イオン石巻のモールマネージャー秀方淳さん(49)は実感を込めて強調する。
 あの日、激震が襲った午後2時46分の後、想定外はまず、午後3時半ごろに起きた。
 客を全て屋外退避させた直後、駆けつけた警察官から「津波が迫っている。客を屋内に誘導してほしい」と求められた。
 マニュアルは店内の安全を確認するまで、客の入店を認めていない。仙台市の支社に連絡しようにも、緊急用の衛星電話さえつながらない。
 津波は確実に市内に迫っていた。「緊急事態だ」。秀方さんは即決した。約900人を屋上へ誘導する。雪が降り始めると、2階の飲食コーナーを「臨時避難所」として開放した。
 そのころ、店長の奥村博司さん(55)は、2階事務所の緊急対策本部で別の判断を迫られていた。「食料や水、毛布などを大量に分けてほしいと、企業や病院などから要請が来ています。どうしますか」。店の幹部が厳しい表情で尋ねてきた。
 倉庫には7000万円分の商品在庫があり、3分の1は緊急食料として利用できる。無償提供は多額の損失になる。後から支払いを請求するには金額の把握が必要だが、その余裕はない。「差し上げなさい」。奥村さんは迷わず告げた。
 「提供先への請求はこの時点であきらめた。あくまで独断。支社と連絡がつかない以上、自分たちでやるしかない。腹をくくった」。奥村さんは振り返る。

 奥村さんも秀方さんも初日から「長期戦になる」と覚悟していた。「食料や水を求めて住民が押し寄せてくるだろう。避難者を受け入れた以上、断れない」。奥村さんらは被災者を支援すると決めた。
 翌12日には早朝から店頭に人があふれ、約2000人分の菓子や飲料を無料で配った。午後には災害協定を結ぶ石巻市の職員が「市内の避難所用に丸ごと売ってほしい」と、棚にあった食品の提供を頼みに来た。
 13日昼すぎには、男性2人が全身ずぶぬれで避難してきた。浸水した建物から救助され、市中心部から逃れてきたという。衣料課長の福永千尋さん(38)は「市内はまだひどい状況なんだと思い知らされた」と語る。

 市内のライフライン寸断と食料不足―。緊急避難所は3月25日まで続いた。従業員はこの間、食料配給や物資確保など1班約30人の4班体制で対応。薬剤師は急病人のケアに当たった。営業を再開したのは31日になってからだった。
 自宅が津波で流失し、12日から閉鎖まで身を寄せた会社員の男性(48)は「営業もせずに、不眠不休で私たちのために働いてくれた。感謝しきれない」と話す。
 石巻市によると、市内最大の指定避難所が受け入れた避難者は、ピーク時で約3000人。イオン石巻の受け入れ者数はほぼこれに匹敵する。
 企業が自治体と結ぶ災害協定は通常、物資提供などにとどまる。宮城県によると、大型店など民間商業施設が避難所に指定されているケースは、県内にないという。
 企業は災害時に何ができるのか。イオン本社は「災害マニュアルを改定し、店舗の役割に非常時の避難所機能を盛り込むことも検討している」と説明する。(鈴木美智代)=2011年7月24日河北新報
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 2011年3月11日の東日本大震災発生以来、河北新報社は、被災地東北の新聞社として多くの記事を伝えてきた。
 とりわけ震災が起きた年は、記者は混乱が続く中で情報をかき集め、災害の実相を明らかにするとともに、被害や避難対応などの検証を重ねた。
 中には、全容把握が難しかったり、対応の是非を考えあぐねたりしたテーマにもぶつかった。
 5年の節目に際し、一連の記事をあえて当時のままの形でまとめた。記事を読み返し、あの日に思いを致すことは、復興の歩みを促し、いまとこれからを生きる大きな助けとなるだろう。


2016年03月08日火曜日


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