岩手のニュース

<検証変貌するまち>資金難 テナント事業者

釜石市内最大の仮設商店街「釜石はまゆり飲食店街」。再建をめぐり店主らの思いは揺れる

 被災地のにぎわい再生に向けた課題の一つが、東日本大震災当時にテナントで営業していた飲食店などの再建だ。施設や設備を所有していないため、復旧費の4分の3を助成するグループ化補助金が使えない。資金難に悩む事業者に対し、自治体が独自の補助制度を打ち出す動きも出てきた。

<入居ためらう>
 「補助金があるのとないのとでは差が大きすぎる」
 被災した飲食店約40店がプレハブの仮設店舗で営業する岩手県釜石市の「釜石はまゆり飲食店街」。居酒屋の男性店主(64)が嘆く。
 海沿いの市中心部に借りていた建物は取り壊された。被災後も残った賃貸物件は既に大半が埋まり、賃料が高騰した。グループ化補助金は使えず、数百万円と見込む内装の工事費を賄うには借金するしかなく、入居をためらう。
 津波で自宅を失い、狭い仮設店舗で売り上げが減った。「新鮮な地物の魚介を扱い、まだ他の店には負けない自信がある。職人として雇ってもらえる年齢でもない。何とか再建したいが…」と思い悩む。
 苦境に立つテナント事業者を後押ししようと、被災自治体は新年度、支援策を繰り出す。
 岩手県陸前高田市は津波で壊滅した中心市街地に新店舗を建てる場合の費用について上限500万円で3分の1を補助する。釜石市も再建の初期費用として50万円を上限に2分の1を助成する。ともに個人財産の形成につながる踏み込んだ施策だ。
 釜石市商工労政課の平松福寿課長は「50万円では足りないとの声もあるが、テナント事業者だけを優遇するわけにいかず、他の補助制度とのバランスを取った。何とか中心部に戻ってきてほしい」と説明する。

<多くは様子見>
 市は受け皿づくりにも乗り出す。テナントビルなどを開発する場合に3000万円以内で4分の1を補助。中心部の市有地を大手リース会社に貸し、飲食店18店が賃貸で入る共同店舗の建設計画を進める。
 ただ、現時点で共同店舗への出店に前向きなのは約10事業者にとどまる。釜石はまゆり飲食店街でも様子見の店主が多い。復興需要の終わりが忍び寄り、被災者が中心部から離れた内陸部に移ることや人口減への不安が背景にある。高齢を理由に仮設で営業を終える店主もいる。
 飲食店街の撤去期限は2018年3月。「無理に店を出してやっていけるだろうか。あと2年で考えるしかない」。男性店主は展望を描けないでいる。(東野滋)


2016年03月08日火曜日


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