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イノシシ 津軽海峡目指す?

秋田県上小阿仁村で見つかったイノシシの足跡(村産業課提供)
盛岡市近郊で撮影されたイノシシの親子。母親(中央右)の脇に1歳メスが1匹、手前にウリ坊と呼ばれる赤ちゃんが5匹、写っている=2015年秋(岩手大の青井教授提供)

 秋田県上小阿仁村で昨年11月末、イノシシの足跡が確認されていたことが8日、分かった。北限は7、8年前まで宮城県とされていたが、近年は岩手、秋田両県内でも目撃や捕獲が相次ぐ。今回の発見地点は青森県境まで約40キロ。最北の確認例とみられる。イノシシは農作物を食い荒らし、大きな被害をもたらす。専門家は「津軽海峡に迫る日も遠くない」と警告する。
 秋田県自然保護課によると、足跡が見つかったのは上小阿仁村長信田沢地区。11月27日、住民の通報を受け、村職員らが足跡を発見。ひづめの特徴などから県がイノシシと断定した。
 2012年に秋田県湯沢市など県南部で捕獲や目撃されて以降、報告例が増加。15年1月には、奥羽山脈西側の秋田県横手市山内でオスの成獣1匹を捕獲。同年5月には秋田市に接する由利本荘市岩城の海岸で死骸が見つかった。県の担当者は「県南のごく一部で生息していると思っていたのに、短期間でこれだけ北上するとは」と驚きを隠さない。
 岩手県内でも生息域が広がっている。盛岡市の御所湖東側の猪去集落近くで13年12月、岩手大農学部の青井俊樹教授(野生動物管理学)らがクマ用に設置したセンサーカメラに偶然イノシシが写り込み、北緯40度付近まで北上したことが確認された。昨秋には赤ちゃんイノシシも撮影され、定着と繁殖が確実になった。
 青井教授は「イノシシによる被害はシカやサルとは桁違いに大きい」と指摘する。特に心配されるのが稲作への影響だ。泥浴びや踏みつけられた後は収穫できなくなる。米どころの岩手南部や秋田では今後、甚大な被害が出る恐れがある。
 青井教授によると、江戸時代に盛岡藩を挙げて駆除した記録があり、明治初期までは岩手県内に広く生息していた。「北限が変わったというより、再分布が始まったとみるべきだ。青森に入るのも時間の問題。北東北は行政も農家もイノシシに無防備なだけに、対策が急務だ」と強調する。
 中山間地の過疎化が背景にあるとの見方もある。東北芸術工科大芸術学部の田口洋美教授(環境学)は、狩猟や林業が下火になった影響と推測する。ハンターでもある田口教授は「人々が自然に目を向けない間に、静かに生息域を広げたのだろう」と語る。

[イノシシ被害]農林水産省の集計では2014年度、イノシシによる農業被害は全国で55億円。就農意欲の低下や耕作放棄地の増加など、金額だけでは表せない影響もある。12年度末の推計では、西日本を中心に全国で90万頭弱が生息しているとされる。


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2016年03月09日水曜日


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