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<震災5年>学びツアーで情報発信

小井戸英典(こいと・ひでのり)城西大卒。百貨店勤務を経て、81年こいと旅館(いわき市)入社。01年社長。15年から福島県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長。60歳。いわき市出身。

◎東北・経済人に聞く(4)福島県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長 小井戸英典氏

 −東京電力福島第1原発事故後、福島県内の多くの宿泊施設が作業員や被災者を受け入れた。
 「工事関係者や警察については2011年の3月中旬から、被災者は4月から受け入れを始めた。応援したいという一心だった。災害時に役立ったことで宿泊業をやっていて良かったと振り返る仲間が多かった。ただ観光にシフトできたのは、早い施設で11年の秋以降だった」

 −業界の現状は。
 「東日本大震災前の組合員は約650施設だったが、約580施設まで減った。被災して営業できなくなった施設のほか、原発作業員の宿舎として買い取られたり、観光客が減って後継者もいないため廃業したりしたところがあった。会津若松市が舞台になったNHK大河ドラマ『八重の桜』や自治体の宿泊券事業で稼働率が上がっても、一過性に終わってしまう」

 −誘客に向けた課題は。
 「昨年4〜6月の大型観光宣伝『ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)』をきっかけに、もう一度誇りを取り戻そうと、各地域が独自の観光プログラムづくりに取り組んだ。DCだけで終わるのではなく、持続的な取り組みにする必要がある。県と民間で連携し、観光人材の育成にも取り組んでいる」

 −外国人旅行者数は震災前に戻っていない。
 「全国に比べ外国人旅行者数が伸び悩んでいる東北の中でも福島は特に少ない。逆に言えば伸びしろがあるということ。情報発信がうまくできていなかった。多言語表記や公衆無線LAN『WiFi(ワイファイ)』など受け入れ態勢の整備も遅れていた。外国人が好むものを国籍ごとに分析し提案することが重要だ」

 −風評被害は根強い。
 「被災地を巡る旅は『ダークツーリズム』と呼ばれることもあるが、私たちは希望を持って福島で生活している。『ホープツーリズム』として希望の光をみる学びのツアーを組み、国内外に情報発信できるといい。修学旅行で来県する学校数も震災前に戻っていない。物見遊山にならない、福島でしかできない体験を提案する必要がある」
 「福島の売りは人。街の飲食店や商店の人、住人たちとの交流を楽しんだ観光客は、リピーターになってくれる。観光産業だけでなく、商業や農林水産業なども持続していける取り組みを、地域で一つになって生みたい」(聞き手は報道部・奥山優紀)


2016年03月11日金曜日


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