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<震災5年>想定外への備え不可欠

海輪誠(かいわ・まこと)東北大卒。73年東北電力入社。上席執行役員新潟支店長、副社長を経て10年6月に社長就任。15年6月から現職。66歳。東京都出身。

◎東北・経済人に聞く(5完)東北電力会長 海輪誠氏

 −震災前の2010年から社長を5年間務めた。
 「多くのことが同時並行で起きた激動の5年だった。ご迷惑を掛けた13年9月の電気料金引き上げもあり、震災で傷んだ経営を回復軌道に乗せることができた。だが4月の小売り全面自由化など電力システム改革の本番を迎える中、安定的な経営を持続できるかどうか、安心はできない」
 「震災後、わが社の供給力1500万キロワットのうち800万キロワットが一時止まった。休止中の火力発電所をフル稼働し、普段は絶対に使わない高額な電力、燃料も買った。原発停止が長引き、燃料費の増大で自己資本比率の10%割れが現実味を帯びた。電気料金の引き上げは復興の負担となりかねず、苦渋の決断だった」

 −東京電力福島第1原発事故から得た教訓は。
 「当社管内で事故は起きた。過酷事故は起きないという従来の考えでは駄目だった。想定外が起きうると学んだことが最大の教訓だ。過酷事故の可能性を前提としなければ対策に慢心が出る。原子力はリスクを避けながら使わざるを得ない。しかし、もっと謙虚にリスクと向かい合うべきだと痛感した」

 −この5年はエネルギー政策の転換期でもあった。
 「電力改革の議論は震災で加速したが、発送電分離には反対だ。電力の公益性や、震災時の復旧対応で発揮した総合力が失われると危惧する。効率性や収益性だけでなく、インフラを預かる公益的な使命を忘れてはならない」

 −災害時、緊急時の組織対応の在り方はどう考えるか。課題は。
 「東北は震災前も岩手・宮城内陸地震(08年)など数年ごとに災害に見舞われてきた。私自身も新潟支店長時代に新潟県中越沖地震(07年)の対応に当たった。社員が経験を積み重ねて反省し、訓練内容を高めてきたことが震災の初期対応では生きたのではないか」
 「震災後は原子力と一般災害の複合訓練を、過酷事故も想定し応用力を試す厳しい内容にした。装備の充実、他機関との連携など危機管理は前進した。一方で経験の風化を恐れている。幸いこの5年間は大災害がなかったが、これから何かあった場合、震災当時の総合力で臨めるかどうか。備えの重要さや経験を若い社員に伝えていくことが大きな課題だ」(聞き手は報道部・村上浩康)


2016年03月12日土曜日


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