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<避難解除>帰還の高齢者点在 支援模索続く

猪狩さん(右)と談笑する生活支援相談員の大塚さん(左)と鈴木さん=2月29日

 東京電力福島第1原発事故で福島県楢葉町に出ていた避難指示が解除され、半年が過ぎた。帰還した町民は6.2%の459人(4日現在)で、65歳以上が51.2%を占める。コミュニティーが崩れ、生活環境も整わない中、高齢者をどう守り支えるのか。関係者の努力と模索が続いている。
 午前10時、町社会福祉協議会の生活支援相談員大塚美恵さん(50)と鈴木由美子さん(48)が車で出発した。帰町者らを訪問して話を聞き、支援の必要があれば関係機関につなぐ。

 「留守だね」。最初の4軒は空振りだった。5軒目。「こんにちは。あー、お父さん」。猪狩好光さん(78)が笑顔で現れた。2人も笑顔で「風邪ひいてなかった?」。軒先でまきストーブを囲み、猪狩さん自慢の蜂蜜入りコーヒーを飲みながら談笑が始まった。
 猪狩さんは、いわき市の避難先から毎日、車で通う。泊まりはしない。「こっちにいると、本当にせいせいする。でも夜は真っ暗で寂しくて、いられねえ」

<1日50軒訪問も>
 話し込むこと1時間以上。「顔色が良くて安心した。運転には気を付けてくださいね」と鈴木さん。猪狩さんは「また寄ってくんちぇ」と2人を見送った。
 訪問活動は相談員2人1組が交代で動く。1月末までに町内全戸を回り、住宅地図に「完全帰町」「週の半分以上宿泊」などと色分けした。不在続きで1日50軒に上る日もあった。話が尽きず数軒の日も。「ただ普通に接し、世間話をする。結果的に何かの役に立てれば」と大塚さん。
 点在する高齢者の孤立をどう防ぐのか。訪問・見守り活動と共に求められるのがコミュニティーの場だ。
 社協が運営し、昨年11月に再開したデイサービスセンター「やまゆり荘」。介護サービスに加え、交流の拠点としても期待される。

<一般に門戸開放>
 登録者24人のうち要介護・支援は15人。介護予防のため、一般にも門戸を広げている。多い日は十数人が温泉に入ったり、リハビリ器具を使ったり。「どこも行く所がない。ここで皆さんと話すのがうんと楽しみ」と佐藤静子さん(85)。
 社協の松本和也事務局長(62)は「元気な高齢者が多いが、近所不在で寂しい人もいる。まず外に出てもらうことが大切」と話す。
 4年半にわたって全町避難した楢葉町は、超高齢化の中で、一から保健・福祉の再構築を迫られる。特養ホームは3月末に再開する予定だが、介護老人保健施設は未定だ。
 町地域包括支援センター長の磐城美樹さん(52)は「今も試行錯誤の状態だが、帰町が進めば高齢者がさらに増える。若い有資格者などマンパワー不足の中、医療・介護・福祉の連携をどう図るのかが課題だ」と指摘。「公的支援を補うためにも、介護予防や交流に力を入れ、高齢者同士、住民の誰もが支え合う地域づくりが必要」と強調する。


2016年03月14日月曜日

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