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<山形大生死亡問題>市民感覚とのずれ解消

「検証の結果、市の対応に問題があった」と強調した佐藤山形市長

 119番山形大生死亡問題をめぐり、佐藤孝弘山形市長は「救急車は出動させるべきだった。市の対応には問題があった」と結論付けた。損害賠償請求訴訟の和解成立から30日で1年。市民感覚とのずれを解消するとともに、通報を受理した市消防本部職員、身内をかばい続けた前市政からの変化を強く打ち出した。(山形総局・伊藤卓哉)

<検証>
 「大いに反省すべき点があった。今後、本件事案のような通報があれば必ず出すということだ」
 佐藤市長は2月25日の臨時記者会見で断言した。
 昨年9月の市長選前から、市川昭男前市長らの対応を痛烈に批判してきた。初当選の翌日には問題を検証する方針をあらためて示した。約5カ月かけて市消防職員に聞き取りし、裁判資料を精査した。
 「最大のポイントは(前市長らが)『適正な業務の範囲内だった』と言ったこと。市民の目から見て適正とは言えない。そのずれが裁判も含めて、さまざまな方に苦労を掛けた出発点だったと思う」
 会見では市民の不満、不安の解消を強調した。遺族と面会して謝罪し、墓参したことも明らかにした。
 大学生の母親は説明に納得し、こうした問題が二度と起きないよう不断の努力を強く求めたという。
 決意表明は、就任後の検証という手続きを踏んだ上で、佐藤氏が描いてきた市長の姿を示したといえる。

<改善>
 会見では問題発生後、山形市が取り組む救命救急態勢の改善策も説明した。新年度には医療従事者と弁護士らで構成する「救急救命業務のあり方検討会(仮称)」を発足させる方針も明らかにした。
 「検証の結果、原則出動の意識が組織として足りなかった」との反省に立つ。年に数回会合を開催し、通報受理時の通信指令員の的確な応答方法、救命率向上の手段などについて協議する。市は助言を基に組織の強化と技能の充実を図る。
 通信指令員の教育態勢づくりは全国的に進んでいない。昨年3月に山形県などが開いた講演会で講師を務めた大学教授は、全国の消防本部の約6割が研修を実施していない実態を説明し「多くが先輩から後輩へ口頭で引き継がれている程度だ」と危うさを指摘した。
 山形県は新年度、山形大生死亡問題も教訓に県内統一研修を導入する。都道府県レベルでは福井県に次いで2例目だが、遺族らが訴訟を通じて訴えた再発防止策の徹底は広がりを欠いているようにも見える。

<期待>
 昨年3月、訴訟の和解成立後の市側記者会見は、遺族側を激怒、落胆させた。
 「大久保さんの救急要請は途中で撤回された。今後も救急要請があれば出動させる」。海和孝幸消防長は、同じ事態が起こり得るともとれる言葉を2度繰り返した。市川前市長ら市幹部が言葉を補ったり追加で発言したりすることはなかった。
 遺族代理人を務めた藤木孝男弁護士は「最後まで前市政への不信感は消えなかった」と振り返り、「新市長の下で救急救命態勢の改善に全力で取り組んでもらいたい」と期待する。
 佐藤市長の検証結果に対し、市川前市長は取材に答えた。「新しい市長の考えだ。和解している話でコメントすることはない」

[119番山形大生死亡問題]山形大理学部2年大久保祐映(ゆうは)さん=当時(19)=の母親が2012年6月、山形市に損害賠償を求めて提訴した。訴えによると大久保さんは11年10月31日早朝、市内の自宅アパートから119番して救急車を要請。市消防本部の通信指令員は自力で病院に行けると判断し、救急車を出動させなかった。大久保さんは9日後、自宅で遺体で発見された。訴訟は15年3月30日、市が解決金1500万円を支払い、本件を教訓として重く受け止め、市消防本部の職員研修に採り入れることなどを柱に和解が成立した。


2016年03月15日火曜日


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