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<みやぎ富県10年>企業強化 なお道半ば

自動車部品専用工場で製品をチェックする登米精巧の従業員=登米市迫町

 村井嘉浩宮城県知事が2005年の初当選時から掲げる産業振興策「富県戦略」は、昨年11月で知事任期と同じ丸10年を経過した。08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災を経ても、地域経済は着実に成長を続けてきたように見える。中小企業と従業員は実際に豊かになったのかどうか。村井知事が最重要分野と位置付ける「ものづくり産業」の現場から探った。(報道部・浅井哲朗)=6回続き

◎製造業の現場から(1)現在地

 「ドーン、ドーン」。鋼材を打つ重いプレス音が響く。所狭しと配置された産業用ロボットから、金属部品が次々とはき出される。
 活気に満ちた自動車部品専用工場。機械部品加工を手掛ける社員約100人の登米精巧(登米市)が14年1月に稼働させた。
 1年半後、トヨタ自動車は家族向け「シエンタ」の新型車を発売。トヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)が生産を担うことになる。
 登米精巧はこうした行方を見据え、部品業界への本格参入を決めていた。愛知県の有力企業の支援を受け、加工から表面処理まで一貫生産できる最新鋭の設備を整えた。
 「国内の製造業がどんどん海外に流れている。チャンスを生かさなければ先はないと判断した」。後藤康治社長は当時を振り返る。

<「甘くない」>
 富県戦略は「1、3次に偏っている県内経済の産業構造を、ものづくり中心に2次にシフトする」(村井知事)ことで付加価値向上を狙う。柱に据えるのは波及効果が大きい分野。産業の裾野が広い自動車関連は当初から代表格だった。
 戦略は順調に滑りだす。村井知事のトップセールスと、東北を生産拠点化させたいトヨタの考えがかみ合い、当時のセントラル自動車(現トヨタ東日本)の大衡村移転が実現した。関連企業の進出は加速し、トヨタ側は地元の取引企業の開拓、育成にも力を注いだ。
 一連の流れに乗って社業を拡大させた登米精巧は、さながら「富県戦略の地元モデル」と見られるが、参入から2年を迎えてもなお、必死にアクセルを踏んでいるのが現実だ。
 自動車関連は売上高全体の2割と成長途上にあり、事業単体では採算に届かない。もうけを出すにはコスト削減の壁に挑み、新規受注で数も稼ぐ必要がある。
 「何もかもが違う世界で、まだまだ経験を積まなくてはならない」と後藤社長。自動車産業は「甘くない」と気を引き締める。

<横ばい続く>
 村井知事は08年度、経済界の強い反対に遭いながら県独自の超過課税「みやぎ発展税」を導入。これを財源に企業立地補助金の上限を4倍に引き上げた。その結果、県は14年度までの7年間で工場立地が約200件あり、1万人の雇用が新たに生まれたと試算する。
 県内総生産(名目)は13年度、8兆8166億円に達し、統計が残る01年度以降の最高を記録。県内製造品出荷額(確報)は14年に最高の4兆円近くとなり、付加価値額も増加傾向にある。村井知事は「企業誘致の効果」を強調する。
 ただ「ものづくり産業」である製造業が、県内総生産に占める割合は1割強のまま。震災の影響もあって横ばい状態が続く。
 東北大大学院経済学研究科の大滝精一教授は「宮城はもともと地元製造業の層がそれほど厚くない。中小の底上げ、ビジネスマッチングなど支援が欠かせない」と指摘する。
 富県戦略が目指すのは県内総生産10兆円。分厚い中小企業層をいかに構築するかが成否の鍵を握る。


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2016年03月20日日曜日


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