宮城のニュース

<みやぎ富県10年>下請け 二極化進行も

トヨタ車向け部品を検査する従業員=2月、大崎市内の工場

◎製造業の現場から(2)苦闘

 のどかな農村集落が広がる宮城県北の縫製工場。トヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)の下請けに入る社長が憤りを抑えるように語る。「『一寸の虫にも五分の魂』と言うが、世界のトヨタに零細を思う気持ちはないのか」
 女性縫製工を中心に、約30人を雇い入れる典型的な零細企業。トヨタ自動車の関連企業を通じて小型車のシート縫製を請け負う。
 2011年、東北への拠点化を進めるトヨタが岩手県金ケ崎町と大衡村の2工場体制を整えると、受注が増えた。同時に、コストダウン圧力が強まった。
 絞りに絞り込んだ見積もりが「トヨタ生産方式」の壁にはね返される。「スピードを上げればこの額の6割で済む。愛知の企業はできる」。何から何まで「標準」が求められる。
 仕事はあるが、もうけは少なく経営は苦しい。社長の脳裏に「トヨタをやめたい」という思いがちらつく。だが、「雇用を守らないと。たとえ餅代ほどのボーナスを出せなくても、だ」と踏みとどまる。
 
<効率化が影>
 自動車1台当たりの部品は3万点ともいう。世界生産1位を誇るトヨタの部品供給網の中で、中小零細企業がしのぎを削ることは、グローバル企業戦略に揺さぶられることを意味する。
 従業員約100人を抱える大崎市内の中堅樹脂成形工場。昨年、社長が気掛かりなニュースを目にした。
 「カローラ再び愛知へ」。苦労の末に初めて部品受注に成功したトヨタ東日本の代表車種が、20年までに生産移管されるという。
 次の車種で受注できる保証はどこにもない。大衡村で昨年生産が始まった「シエンタ」を取り逃がしたこともあり、焦りが募る。
 トヨタの生産再編は、世界的な市場競争を勝ち抜く鍵の部品共通化戦略「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の一環。
 劇的な生産効率化は、下請けの在り方や雇用にも影響を及ぼしかねない。社長は「われわれ中小はどう対応すればいいのか」と不安を口にする。
 
<増す厳しさ>
 国の工業統計では、13年の東北6県の自動車関連など輸送用機械出荷額は1兆6314億円に上り、トヨタの完成車工場が岩手県内で稼働する前の1992年の2.3倍に達した。
 ものづくり中心の2次産業にシフトを図る「富県宮城」。その実現に不可欠な東北の自動車関連産業は着実に規模を拡大したが、技術革新の荒波の中で裾野を支える参入企業の苦闘は厳しさを増す。
 複数の自動車メーカーと取引する岩機ダイカスト工業(宮城県山元町)の斎藤吉雄会長は「仕事をもらうだけでなく、『こうしてはどうか』という提案力が試される」と指摘する。
 下請けの中小企業は、勝ち組と負け組に二極化が進む可能性がある。


関連ページ: 宮城 経済

2016年03月21日月曜日


先頭に戻る