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<みやぎ富県10年>非正規増 見えぬ未来

期間従業員を含む多くの雇用を生んだトヨタ自動車東日本宮城大衡工場=2012年5月、宮城県大衡村(本文と写真は関係ありません)

◎製造業の現場から(3)生活不安

 宮城県内の好調な企業業績の陰で、製造現場の期間従業員ら非正規労働者が生活不安におののく。
 多賀城市内にある電子機械工場に派遣社員として勤務する男性(45)は、生産ラインに1日8時間立ち、夜勤もこなす。最近は新製品の増産で忙しい。
 正社員として一筋に働いてきた仙台市内のホテルが東日本大震災で被災。閉鎖され、退職を余儀なくされた。「心が折れ、目標を見失った」。立ち直るのに約2年。2013年に再就職を果たし、その後、今の工場に転職した。
 妻と子ども2人の4人暮らし。部下を何人も率いたホテル時代の半分に減った給料は、なかなか上がらない。専業主婦だった妻も働きに出てくれ、何とか貯金ができる状態だ。
 将来の見通しは開けない。「このままずっと派遣ではいられない。が、今は食べていくだけで精いっぱい」。職場の後輩は一様に「今の給料ではとても結婚できない」とこぼす。

<県内38万人>
 村井嘉浩知事が就任する前年の04年、国の規制緩和で製造業への派遣が解禁された。ものづくり中心に2次産業シフトを図る「富県戦略」にとって、人手確保の追い風となった。
 5年に1度の国就業構造基本調査によると、12年の県内の非正規は38万人。07年から4万人増え、全体に占める割合は39.3%に上昇した。東北で唯一全国平均(38.2%)を上回る。
 11年に稼働したトヨタ自動車東日本(大衡村)や東京エレクトロン宮城(大和町)など大工場群が集積する黒川郡周辺だけでも「1000人規模の派遣を雇い入れている」(仙台市内の大手人材派遣会社)。製造業は震災の影響で総就業者数が減少し、非正規の比重が増えた。
 大工場は地域に働く場をもたらすが、非正規が待遇や雇用の「調整弁」として扱われかねないリスクを併せ持つ。

<契約は3年>
 黒川郡に進出したトヨタ自動車系の部品工場で働く富谷町の30代男性は、08年のリーマン・ショック時をはじめ数度の雇い止めを経験した。
 専門学校卒業時に就職氷河期が直撃し、正社員に就けないまま複数の工場を渡り歩いた。トヨタ系は2カ所目。妻も自動車関連のパートをこなし、子ども2人を養う。
 昨年の労働者派遣法改正を受け、契約期間は3年と定められた。「安心して長く働きたいが、先が見えない」と嘆く。
 県のまとめでは13年度の1人当たり県民所得は5年連続上昇の285万7000円となり、初めて国民所得を上回った。が、「富県」を下支えする非正規の生活実感が上向くまでには至っていない。
 男性は「復興支援のために雇っている」などと、派遣を軽視する工場の雰囲気も疑問視する。「人材あってこその企業ではないか」
 誘致企業が地域に深く根差すにもまた、長い時間がかかる。


関連ページ: 宮城 経済

2016年03月22日火曜日


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