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<電力自由化>浸食じわり 攻防正念場

東北電力の新料金プランの特設コールセンター。問い合わせのほか、サービス充実を求める声も寄せられる=仙台市内

◎東北・競争の行方(中)独占崩壊

<首都圏へ参入>
 東北の最大手がようやく見せた「攻め」の姿勢だった。東北電力は今月10日、4月から首都圏で家庭向け小売りに参入することを発表した。
 業界トップ、東京電力の供給エリアでの本格的な「越境販売」。自由化まであと約3週間という慌ただしい発表だった。
 東電の料金と比べた値引き率は最大2.5%にとどまる。電力使用量が多い世帯に的を絞る大手他社や新電力とは異なり、標準的な世帯に薄く広く浸透する戦略。営業部の藤枝宏課長は「首都圏は隣接地域で東北出身者も多い。管内の余剰電力を生かしたスモールスタート」と控えめに語る。
 越境販売へ踏み出す背景には、足元の競争激化に対する危機感がある。

<大口流出進む>
 既に自由化された大口部門は顧客流出が進む。特に2013年の料金引き上げ以降は顕著だ。
 企業や自治体などの累計流出件数はことし1月末で約4700件。大口部門全体の5.8%に当たる。お客さま提案部の担当者は「他社の価格競争力が高まり、だいぶ取られた」と率直に認める。
 家庭部門も少しずつ顧客が離れる。全国の電力需給を調整する電力広域的運営推進機関(東京)の集計によると、東北電の顧客のうち、2400件(3月11日時点)が4月の契約切り替えを申し込んだ。
 自由化への対応について、原田宏哉社長は当初「まずフランチャイズ(本拠地)に注力する」と強調してきた。1月には新料金プランとポイントサービスを発表。オール電化住宅などを対象に、現行より6〜9%安く設定し、顧客の囲い込みを狙う。
 新料金プランが「守り」とすれば、首都圏での家庭向け販売は、昨年10月に東京ガスと設立した北関東の大口向けの電力販売会社に続く「攻め」の一手となる。
 ただ、大手他社などが大幅な値下げや首都圏全体で攻勢をかけるのに比べると、大口、家庭ともに東北電の攻めは本格的ではなく、暗中模索の状態だ。

<再稼働焦点に>
 供給力、価格面で攻勢の鍵を握る女川原発(宮城県女川町、石巻市)、東通原発(青森県東通村)の再稼働は見通せていない。
 東北電は「越境販売と再稼働は関係ない」と否定する。だが、首都圏での販売事業が軌道に乗り、現在の余剰電力では需要に対応できなくなる可能性もある。
 東北大大学院工学研究科の中田俊彦教授(エネルギー経済学)は「自由化は民間企業として羽ばたくチャンスである一方、原発を動かさなければならない理由が問われることになる」と指摘する。
 大手電力がひしめく首都圏での越境戦はいずれ東北に波及する。「わが社から流出するペースは読み切れない」(東北電)。徐々にだが着実に浸食が進む中、東北電が正念場を迎える。


2016年03月24日木曜日


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