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<適少社会>仙台も含め9割危機感

 東日本大震災で被災した市町村の首長は、人口減少問題をどう捉えているのか。河北新報社は、津波や東京電力福島第1原発事故で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県の42市町村長を対象にアンケートを実施した。浮かび上がったのは、加速する人口減への危機感、国の人口減少対策「地方創生」に対する期待と懸念の交錯だった。(「適少社会」取材班)

◎人口減 復興のかたち[17]第4部首長アンケート(1)人口減問題

 震災後、被災自治体の多くで人口減は一気に加速した。最新の2015年国勢調査と前回10年調査を比べると、42市町村のうち36市町村で人口が減少した。
 アンケートでは人口が増えた仙台市などを含め全体の9割に当たる38市町村長が、人口減に危機感を持っていることが分かった。
 5年間で人口が10.9%減少した岩手県野田村の小田祐士村長は「村の存続に関わる重大な問題」と強調した。11.7%減と宮城の市部で最も減少率が高い気仙沼市の菅原茂市長は「生産年齢人口の減少による産業の衰退」を危ぶむ。
 復興事業が社会減に一時的な歯止めを掛けたとの分析も複数あった。宮城県石巻市の亀山紘市長は「復興事業の収束後、さらなる人口減が懸念される」と指摘する。
 原発事故で全域避難が続く福島県浪江町の馬場有町長は「強制避難区域は人口ゼロからのスタートである」と答えた。同田村市の冨塚宥〓(〓は日ヘンに景)市長は、原発避難による世帯分離や地域間の賠償格差で「コミュニティーの崩壊が懸念され、人口減が加速する」と予測した。
 人口が増加した仙台市や宮城県岩沼市、福島県いわき市も「近い将来に人口減少局面に突入する」(奥山恵美子仙台市長)などと危機感を示す。

 一方で福島県相馬市と同新地町、同広野町は「危機感は持っていない」と答えた。広野町の遠藤智町長は「復興に向けた町づくりを通して町民帰還が進んでいる」と説明する。福島県葛尾村は無記入だった。他の市町村長の回答は表の通り。
 首都大学東京の山下祐介准教授(地域社会学)は「岩手、宮城の津波被災地と福島は様相が違う。原発避難自治体は人口減を考える段階にすら至っていない。突き放すような答え方に怒り、もどかしさが見える」と話す。

 人口減が避けられない時代に適応した社会の在り方を探ろうと、人口減によって得られるメリットの有無についても聞いた。11人がメリットに言及した。
 東松島市の阿部秀保市長は「拡大・成長から成熟・安定したまちづくりへの転換という共通認識を市民と持てる」と記した。多賀城市の菊地健次郎市長は「市民の顔が見える自治体経営が促進される可能性」を示唆した。
 全村避難し帰村が6割にとどまる福島県川内村の遠藤雄幸村長は、村民の絆の強まりとともに「耕作放棄地を含めた農地集約化による大規模農業」の可能性に触れた。いわき市の清水敏男市長は「過密な生活空間の改善」「都市機能のコンパクト化による効率的なインフラ整備」を挙げた。
 法政大大学院の小峰隆夫教授(経済学)は「自治体は人口が何割減ろうと対応が必要になる。人口減で良いことはないと思うが、危機感をばねに人口減少時代にふさわしい政策のイノベーションが進むことに期待したい」と覚悟を促す。

[アンケートの方法]東日本大震災の津波に襲われた岩手、宮城、福島3県の沿岸自治体と、原発事故で避難区域が設定された自治体の計42市町村長が対象。1月中旬に調査票を郵送し、2月中旬までに全員から回答を得た。
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 東日本大震災は被災地の人口減少を一気に進ませた。日本全体でも人口減はもはや避けられない。超高齢化を伴う人口減に適応し、心豊かに暮らす「適少社会」の実現が求められる。再生へ歩む被災地に将来の日本のモデルがある。


2016年03月29日火曜日


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