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<医学部誕生>地域医療再生 志育てる

医学部開設で大学構内の書店には、早くも医学専門書コーナーが登場した=仙台市青葉区小松島

 東北に4月、新しい医学部が誕生する。山村や漁村へ。東日本大震災の被災地へ。遠くない将来、若き医師たちが、地域医療再生の使命を胸に赴く日のために。東北薬科大から衣替えする新生「東北医科薬科大」。その挑戦を追う。(報道部・野内貴史)

◎東北医科薬科大の挑戦(上)1期生の使命

<葛藤抱え5年>
 新医学部の1期生は100人。そのうちの一人、福島県いわき市の鈴木法彦さん(20)=磐城高卒=に、入試の面接が強い印象を残した。
 面接官は、東北の医療過疎地に赴任する意思を繰り返し繰り返し尋ねた。口先だけか、本心なのか、見抜こうとしている。選ぶ側も必死なのだ。そう感じた。
 中学校の卒業式当日、震災が起きた。医者になって復興に貢献したい。だが両親に負担を強いることはできない。葛藤を抱えて勉強する日々が5年続いた。
 政府は2013年12月、震災からの東北復興を目的に37年ぶりとなる医学部新設を決定。破格の修学資金制度が、鈴木さんら震災世代の若者たちを医学の門へと導いた。

<校風をつくる>
 「校風は1期生がつくった」。全国の私立医大・医学部には、こんな言い習わしが数多く残されている。
 山形県米沢市の開業医、大辻圭一さん(64)は1973年に開学した獨協医大(栃木県壬生町)の1期生だ。卒業時の医師国家試験に向かって「どこにも手本がないから勉強は全て手探り。1期生が始めた自主勉強会は、大学の伝統として今も続いている」と話す。
 東北医科薬科大でも形作られるであろう校風を、大学側の準備から推し量ることができる。
 1年生が履修する「大学基礎論」は、東北の地理や歴史を幅広く学ぶ異色の講義だ。東北6県で広域展開する診療実習は、交通費や宿泊費を大学が全額負担する。医学教育推進センターの大野勲教授(61)は「医師として東北で暮らしていくのだという自覚を持たせたい」と強調する。

<「預かりもの」>
 学生には1人1台ずつノートパソコンを貸与し、学生個々と教員の双方向性を確保する。1学年当たり4人の担任教員を配し、生活上の悩みまできめ細かくケアする。
 一見、過保護にも思える配慮は、医学教育が「未来への巨額先行投資」だからだ。
 日本医師会によると、入学から卒業するまでに掛かる教育経費は医学生1人当たり1億円。東北医科薬科大の場合、これを自治体出資の修学資金などで賄う。
 「修学資金を貸与される学生は全員、自治体からの預かりものも同然。総合診療医として地域にお返ししなければならない」と大野教授は言う。
 大いなる使命を与えられた1期生たち。入学までつかの間の春休み、鈴木さんは、医学用語の英単語やドイツ語の基礎を独学で学び始めた。

[修学資金制度]35人には宮城県が拠出する90億円などを原資に各3000万円、20人には大学が1500万円を貸与する。1500万円貸与の学生は、自治体独自の修学資金制度を併用できる。いずれも卒業後、東北各地の医療機関に6〜12年勤務すれば返済は不要となる。


関連ページ: 宮城 社会 医学部新設

2016年03月30日水曜日

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