福島のニュース

<3.11と今>福島が好き 心一つに

福島県内の避難所に救援物資を搬入する箭内さん(中央)=2011年4月
「全国の人が被災地を思い、自分の故郷を思えるような広がりをつくりたい」と語る箭内さん=7日、東京都内

◎東北魂(5完)クリエーティブディレクター 箭内道彦さん=郡山市出身

 「ばらばらになった人たちの思いを一つにできる場所をつくりたいと心から思った」
 広告会社「風とロック」(東京)のクリエーティブディレクターで福島県郡山市出身の箭内道彦さん(51)が振り返る。この5年間、音楽活動などを通して福島の再生に心血を注いできた。
 2009年から福島県内外で音楽イベント「風とロック」を開催。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が発生した11年以降も続けている。
 11年は福島出身者でつくるロックバンド猪苗代湖ズのギタリストとして大みそかの紅白歌合戦に出場。「I love you & I need you ふくしま」を歌い奏でた。
 昨年4月、福島県のクリエーティブディレクターに就任し「福島の今と思い」を県の広告やウェブ動画で発信している。

 震災の時は東京にいた。
 「それまで『福島が嫌い』と公言していた。でも震災と原発事故が起きて、平気ではいられなかった」
 爆発する原発を見た時、郡山に暮らす弟や母、仲間たちの顔が浮かんだ。
 直ちに駆け付けようとしたが「今行っても何もできない」と周囲に止められた。猪苗代湖ズのメンバーでバンド「サンボマスター」の山口隆さんらと動画サイトを使い発信を始めた。できることをしたかった。
 「一生、福島を支える」 福島のテレビ局に求められたコメントVTRでそう宣言し、自らに誓った。
 4月上旬、福島県いわき市や郡山市の避難所を訪れた。広告を手掛ける企業から飲食物や雑貨を調達し自ら搬入した。男性が怒鳴り合い、子どもや女性が息を潜める、そんな避難所もあった。
 支援物資の中で最も喜ばれたのは化粧品だった。食料やお金以上に、人の気持ちに作用する「こと」が今必要だと感じた。
 誰も何も「約束」できない状況。約束をして実現することが大事だと思った。すぐに短文投稿サイトで野外ロックフェスティバルの開催構想を発表した。
 原発事故が発生してまだ間もない時期でもあり、福島県内で野外イベントを行うことはタブー視されていた。「人殺し」とまで呼ばれたこともあったが、放射線量を丁寧に測り、地元の有志の若者たちとフェスを作り上げていった。

 9月14〜19日、奥会津、会津若松、猪苗代、郡山、相馬、いわきの6会場で開いた「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」には、合わせて2万2400人もの人々が訪れた。
 箭内さんも猪苗代湖ズとして出演。来場者と一緒に熱唱した。さまざまな思いや立場があっても、福島が好きだという気持ちはみんな同じだった。
 広野町に昨年4月に開校したふたば未来学園高の校歌も作曲した。「子どもが将来を自由に思い描ける場を整えたい」と話す。
 福島は危険だ。安全だ。帰らない。暮らし続ける。被災者はこうあるべきだ。原発事故は人の間に溝を、気持ちに囲いを作ってしまった。
 「思いや立場が違っても、互いを尊重しながら力を合わせ前に進みたい、そう強く願う」(菅谷仁)


2016年03月30日水曜日

先頭に戻る