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<医学部誕生>人事権握る既設が壁に

付属病院の症例検討会。ここから東北全域に連携病院を拡大できるかどうかが新医学部の課題になる

◎東北医科薬科大の挑戦(下)地域定着

<寮で気概養う>
 「自治医大の取り組みを踏まえ、それを乗り越えるよう期待したい」
 新医学部の設置主体に東北医科薬科大を選出する際、文部科学省はこう助言した。「東北の自治医大たれ」とのメッセージだ。
 自治医大(栃木県下野市)は1972年、医療過疎の解消を目指す都道府県の共同出資で設立された。学費は無料。代わりに卒業後は、出身地の診療所などに最低9年間の勤務が義務付けられる。
 「医師になって古里に恩返しする共通目標の下、学生の一体感は強かった」。自治医大OBで東北大卒後研修センターの菅野武助教(36)は学生時代をこう振り返る。
 制度化された地方誘導とともに自治医大が重視するのが、6年間寝食を共にする全寮制だ。寮生活で学生たちは「建学の精神」をたたき込まれ、総合診療医として無医村などに赴く気概を養う。
<理念共有 困難>
 自治医大を巣立った医師は3900人超。それでも東北の医師不足は改善されなかった。人口10万当たりの医師数は2014年末現在、全国平均の244.9人に対して東北は215.6人にとどまる。
 こうした現状に新医学部は、自治医大を模した修学資金制度や勤務年限の義務化で対処する。だが…。
 「使命感を抱く奨学生と一般学生が半々。難しいかじ取りになるだろう」と先行きを危ぶむ声が早くも上がっている。地域定着の難しさを知る自治医大の岡崎仁昭教授(57)=仙台市出身=だ。
 自治医大卒の医師ですら、義務年限を終えた後の地元定着率は70%以下(表)。1学年に修学資金貸与学生55人、一般学生45人が混在する新医学部では、なおさら理念の共有が難しいとみる。

<肩代わり狙う>
 新医学部の拠点となる宮城県はともかく、東北5県では既設の医大・医学部が基幹病院を筆頭に地域の隅々まで人事権を握る。ここに新参医学部の出身者がどう入り込むのかも大きな課題だ。
 自治医大の場合、地域医療振興協会(東京)を組織し、公設病院の運営を請け負うことで閉鎖的な医療界に牙城を築いてきた。東北では青森県東通村の東通地域医療センター、宮城県大和町の公立黒川病院、福島県磐梯町の保健医療福祉センターなど六つの拠点を有する。
 新医学部は地域に浸透する戦略をどう描くのか。東北医科薬科大の高柳元明理事長(67)は、既設の医大・医学部を「基礎研究を重視するあまり、過疎地の医療機関に医師を送り出せていない」と批評する。
 その上で「本学の医師が個々に地域へ入り込み、少しずつ医療を肩代わりしていけば、東北医科薬科大系列へと移行する医療機関も少しずつ現れるだろう」と無手勝流で臨む。


2016年04月01日金曜日


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