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防潮堤の高さ、地盤隆起分を差し引く

気仙沼市内で建設が進む防潮堤。沿岸部では徐々に地盤が隆起している=同市松崎前浜

 東日本大震災に伴う防潮堤の建設事業で、気仙沼市は沈降した太平洋沿岸の地盤が少しずつ隆起しているのを踏まえ、防潮堤の高さから隆起分を差し引いて暫定的に工事する方針を決めた。堤防の高さは震災発生直後の地盤が基準となっていて、隆起により防潮堤が必要以上の高さになる恐れが生じていた。こうした対応は珍しく、他自治体の参考になりそうだ。(高橋鉄男)

<5年で25センチも>
 市は25漁港38カ所で防潮堤整備を計画する。暫定施工するのは原形復旧の6カ所を除く32カ所のうち、国や県が造る防潮堤や河川堤防とのつながりに支障がない約10カ所が対象という。
 国土地理院の衛星利用測位システム(GPS)による観測で、震災発生からことし2月までの変動幅は表の通り。太平洋沿岸部は、震災で地盤が沈降した後に隆起している場所が多い。気仙沼市笹が陣の地盤は65センチ沈下した後に年4〜7センチずつ上昇し、5年間で計25センチ隆起した。
 しかし、隆起分は堤防高の設定に反映されていない。堤防高の基準となる水準点標高が、震災後に国土地理院が測量した2011年10月〜12年12月以降、改定されていないためだ。
 市は国土地理院の水準点改定を見越し、直近のGPS観測で分かった隆起分を堤防高から差し引いて「暫定の高さ」で施工する。水準点を基準とする防潮堤計画そのものは変更しない。
 国土地理院測地基準課によると、水準点の改定時期は未定。担当者は「隆起に伴い改定の必要性は感じている」と説明する。

<県は対応せず>
 地盤隆起をめぐっては、宮城県が「防潮堤の施工は水準点が基準。GPSはあくまで速報値で、気仙沼市の対応は市独自のものと考えている」(河川課)として、施工で考慮する必要はないとの姿勢を崩さない。
 これに対し、沿岸住民からは「地盤隆起で堤防高が高くなる」と疑問の声が上がっている。
 気仙沼市内湾地区の景観・まちづくり検討会のメンバーが3月31日、市役所を訪れ、宮城県にも市と同様の対応を働き掛けるよう菅原茂市長に要望した。同地区の海抜5.1メートルの防潮堤は県が整備を担当する。
 菅原市長は「防潮堤を低くできるチャンスを無視するのはおかしい。内湾地区は防潮堤の高さをめぐり議論を重ねた経過があり、(隆起した)25センチを無視できない。住民側からも強く県に要望してほしい」と応じた。市としても県に対応を求めている。

[防潮堤高] 東日本大震災を踏まえ、被災地の防潮堤の高さは2011年度、数十年〜百数十年に1度発生が予想される高さの津波を防げるように設定された。地形や過去の津波被害を踏まえ計画高は海抜2.6〜15.5メートル。数百年に1度発生する東日本大震災級の津波は防御できない。


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2016年04月03日日曜日


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