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<東北再生>復興計画均質化が浸透

伊東豊雄(いとう・とよお)1941年、韓国ソウル市生まれ。東大卒。主な作品に大館樹海ドーム(97年・大館市)せんだいメディアテーク(2001年・仙台市)など。02年と12年にベネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞、13年に米プリツカー賞を受賞。

◎再生委員に聞く/建築家 伊東豊雄氏(74)

<自然とつなぐ>
 東日本大震災以降、建築家には自然と人間をつなぐネゴシエーター(交渉人)としての役割が求められていると感じるようになった。
 言い換えれば、住民と話し合い、地域の歴史や知恵を反映する、その場所にしかない建築を一緒に造るということ。これが震災で得た最大の教訓になった。
 仙台市宮城野区や陸前高田市で仮設住宅の共有スペース「みんなの家」を手掛けたとき、被災地の皆さんが自然に親しみながら古い共同体を維持している人たちであることを意識した。
 近代主義の思想は建物の内と外をはっきり区切るが、みんなの家は縁側を造り、ひさしを出した。明治以前の日本の住まいにあった連続の思想を少し展開しただけで、住民の方々は涙を流して喜んでくれた。
 復興計画は全体として政府主導であり、土木主導。「どのまちも同じような復興でなければまずい」という考え方で、結局小さな都市化を進めている。自治体行政は官僚機構の仕組みの中でしか動けず、均質化を求める近代主義の思想が広く浸透している。
 防潮堤だけで海と陸を分けようとしているが、2段、3段の構えのグラデーションで減災を図る方が安全率は高まる。
 土木の思想は、いまだに単純なシミュレーションしか持たない。防潮堤を信頼して亡くなった人がたくさんいるというのに、人は災害時にどう行動するかを勘定に入れていない。現在の土木技術はもっと複雑なシミュレーションができるはずなのに、全く怠惰だ。

<提案かなわず>
 釜石市復興アドバイザーとして、山並みのように変化に富んだ公園のような防潮堤や住民が毎日一緒に食事できるような災害公営住宅を提案したが、政府主導の復興計画によって全て拒否された。若い建築家が従来のコミュニティーを持続できるように提案した災害公営住宅も、建設費高騰と人手不足で実現できなかった。
 3.11以降、自然から祝福される建築の在り方を考え続けている。自然を敬い、許しを請いながら造っていくという謙虚な精神を忘れたら、必ず自然に復讐(ふくしゅう)される。
 完全に大丈夫だと言い切れる技術はあり得ないという立場に立てば、復興計画は思想的に狂っていると言わざるを得ない。
 今後は住民自身が「自分たちが一緒になってこのまちをつくるんだ」という意思を持てるかどうかが重要になる。復興にはまだ時間がかかる。住民主導の計画へ、修正するのは今からでも遅くないはずだ。

◎河北新報社提言
 【安全安心のまちづくり】
(1)高台移住の促進・定着
(2)地域の医療を担う人材育成
(3)新たな「共助」の仕組みづくり

 【新しい産業システムの創生】
(4)世界に誇る三陸の水産業振興
(5)仙台平野の先進的な農業再生
(6)地域に密着した再生可能エネルギー戦略
(7)世界に先駆けた減災産業の集積
(8)地域再生ビジターズ産業の創出

 【東北の連帯】
(9)自立的復興へ東北再生共同体を創設
(10)東北共同復興債による資金調達
(11)交通・物流ネットワークの強化


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2016年04月04日月曜日


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