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<東北再生>国境越えて販路開拓を

今野秀洋(こんの・ひでひろ)1944年、宮城県石巻市生まれ。東大卒。68年旧通商産業省入省。経済産業省経済産業審議官などを歴任し2002年退官。10年から三菱商事取締役。

◎再生委員に聞く/元経済産業審議官 今野秀洋氏(71)

<にぎわい移動>
 東日本大震災の発生から5年が経過した被災地を三つの視点で考えたい。
 一つ目は被災者の心のケアの問題だ。ことしの3.11は節目報道が相次いだが、被災地には悩みや喪失感を抱える人、体調を壊す人が多数いる。政府も今後5年間の復興・創生期は心身ケアに重きを置く。一人一人の事情に配慮した取り組みを強化してほしい。
 被災地で生まれ育ち、いまは東京に暮らす者の一人として、震災ボランティアとして支援してくれた人たちが、被災地とのつながりを絶やさず、応援する気持ちを持ち続けてくれることを願っている。
 第二にインフラ復旧の成果を考えたい。復興庁によると、国道は全体の99%が復旧、海岸対策は85%で着工している。JR仙石線の東北線乗り入れなど新たな交通体系も生まれた。
 石巻市を例に挙げると、確かに元の市街地や海岸部の復興は遅れているようだが、内陸寄りの新蛇田地区にはニュータウンが形成され、事業所や商店が張り付きつつある。にぎわいの重心が移動したと見ることもできる。魚市場の再整備が進み、水揚げ量も戻りつつある。
 復興が遅れているとか、無駄が多いとかいう指摘は一面的。復興の進行状況に被災地の方々が気をもむのは当然だが、他地域の人々が、短時間視察しただけで復興に携わる人たちをあげつらうのはいかがなものかと感じている。

<人口減の縮図>
 今後重視すべきは産業再生の視点だ。
 製造業を見ると、全国的に景況が悪化した昨年、宮城県の落ち込み幅は全国平均を上回った。東北経産局が昨年6月に実施したアンケートには、被災事業所の多くが「失った販路を回復できない」と答えている。
 東北再生への提言は「新産業システムを創生しよう」と訴えた。震災前から人口が減っていた東北が産業「復旧」に目標を置いてもじり貧状態の打開にはならない。産業「復興」には新しいビジネスモデルを示すしかないというメッセージだった。
 日本市場全体も人口減少局面に突入し、東北は日本の抱える問題の縮図となった。
 この問題の解決には、国境を越えて顧客をつかむしかない。世界の顧客、世界の市場に向かってチャレンジする意欲と発想が、被災地に新しい東北を打ち立てる原動力になる。全国からの支援で復旧したインフラの上に産業再生を果たすことを、今後5年間の重要目標としてほしい。

◎河北新報社提言
 【安全安心のまちづくり】
(1)高台移住の促進・定着
(2)地域の医療を担う人材育成
(3)新たな「共助」の仕組みづくり

 【新しい産業システムの創生】
(4)世界に誇る三陸の水産業振興
(5)仙台平野の先進的な農業再生
(6)地域に密着した再生可能エネルギー戦略
(7)世界に先駆けた減災産業の集積
(8)地域再生ビジターズ産業の創出

 【東北の連帯】
(9)自立的復興へ東北再生共同体を創設
(10)東北共同復興債による資金調達
(11)交通・物流ネットワークの強化


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2016年04月05日火曜日


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