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<三陸沿岸道>販路拡大 海外も視野に

水揚げがピークを迎えた「花見かき」。養殖業の本格復興に向け、物流網の整備は不可欠だ=宮古湾

◎岩手復興 大動脈北へ(12)距離縮まる

<時間・コスト改善>
 海から引き揚げた養殖用ネットに、大粒に育ったカキが詰まる。
 春の日差しが降り注ぐ宮古湾(岩手県宮古市)の堀内漁港。三陸の海の恵みをたっぷり含んだ「花見かき」の水揚げが最盛期を迎えた。
 「宮古の春の味覚。多くの人に楽しんでほしい」。宮古漁協津軽石牡蠣(かき)養殖組合の山根幸伸さん(59)が、一つずつ手に取り実入りを確かめる。
 海岸線が深く入り組んだ宮古湾は岩手県内でも大船渡湾(大船渡市)、広田湾(陸前高田市)と並び養殖カキの有数の漁場だ。
 「花見かき」は東日本大震災の被害を乗り越え、2013年に生産を再開。4年目となる今年は被災後、最高の出来という。
 それでも、取り巻く環境はまだ厳しい。県沿岸のカキ養殖は津波で養殖棚が流されただけではなく、生産を再開する漁師が減り販路も失った。
 被災前と比べ漁業者は4割減。生産量はほぼ半減した。東京都中央卸売市場の県産カキ取扱量は、震災前の10年は約1074トンで全体の半分を占めた。それが15年には621トンとなり3割まで減った。
 首都圏に出荷するカキの多くは、国道45号を南下し、中継地の気仙沼市で一度集荷のため降ろす。宮古からの直送ルートはなくコストや時間がかさむ。
 「道路整備によって東京市場に直接運ぶルートができる。運賃が安くなれば漁師の手取りも良くなる」。宮古漁協の竹林敦司業務課長は、三陸沿岸道路(仙台−八戸、359キロ)の全通で物流が飛躍的に改善することを待ち望む。

<仙台空港が結ぶ>
 宮古にはもう一つ基幹産業がある。スマートフォンやデジタルカメラ、パソコンの部品に使われる精密機器・コネクターの製造工場。隣接する岩手県山田町を含め、関連する十数社の工場が立地し、生産規模は東京や大阪に次ぐ。
 山田町にあるエフビー(田鎖健一社長)は1975年にコネクターの製造を始めた企業の一つ。産業集積のメリットを生かし、業績を伸ばしてきた。
 同社の里舘秀一副工場長は「最近は納品先にスピードを求められる機会が増えた。より短時間で部品を届ける必要がある」と道路整備による時間短縮の効果を見据える。
 配送には宅配業者を使う。現在は首都圏に翌朝に届ける場合、前日夕方までに発送を終える必要があり、工程は過密だ。「1時間の差が1日、2日の違いになることもある。仙台空港が近くなることで、首都圏以外にも目を向けることができる」と新たなビジネスチャンスをうかがう。
 岩手県立大地域政策研究センターの植田真弘センター長(経営学)は「大消費地から遠いという不利な条件が改善する。鮮度が求められる水産物や加工品への効果は大きい。沿岸各地に寄って共同で集荷し、仙台空港から海外展開するような仕組みづくりが必要だ」と話す。


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2016年04月16日土曜日


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