福島のニュース

<震災と憲法>原発事故が奪った日常

知人たちと除染作業に当たる杉浦さん(右)=伊達市

◎被災地から考える(4)13条 幸福追求権

<「桃源郷」が一変>
 除染を終えた福島県伊達市霊山(りょうぜん)地区の畑に2015年12月、子どもたちの歓声が響いた。福島県北地方の伝統野菜、信夫(しのぶ)冬菜の収穫だ。
 企画した福島市のNPO法人「ふくしまGreen space」は東京電力福島第1原発事故後、子どもが安心して屋外で活動できる環境を取り戻そうと、緑地や野菜作り、除染に取り組む。
 「子どもたちにとって身近な自然と触れ合う時間はかけがえのないもの」。代表の杉浦美穂さん(39)=伊達市=は力を込める。
 杉浦さんは10年ほど前、夫の転勤で福島に移った。「花と果樹にあふれる桃源郷」で娘2人を育てる生活は、原発事故で一変。外で葉や枝を拾ってくる娘に、「捨てなさい」と言わなければならなくなった。
 福島にとどまる人は目に見えない不安を背負う。「福島に生まれただけで、当たり前だった幸せな生活が奪われるのはおかしいし、悔しい」
 幸い、夫が研究者で放射線の知識があった。除染すれば被ばくのリスクは減らせる。自然界の全てが危ないわけではない。
 「漠然とした不安で福島を離れた親も、全く気にしていない親も、放射線について知る機会が無いまま置き去りにされている」。杉浦さんは正確な情報の重要性を感じた。
 夫と協力して緑地の放射線量を測定し、NPOのホームページに公開。樹皮が剥がれにくい桜の木などには触れないよう注意を促し、毎年入れ替わる木の実や葉は触っても大丈夫だと説いた。

<経済的負担重く>
 科学的なデータを基に、ただただ普通に暮らせる方法を模索する。
 自主的に避難した人も悩みが尽きない。南相馬市小高区から米沢市に移り住んだ市避難者支援センター「おいで」事務長の上野寛さん(51)は、避難者や自身の将来を憂う。
 福島県は16年度末、災害救助法に基づく借り上げ住宅の無償提供を打ち切る方針だ。夫が福島に残り、県外に子を連れて避難する妻など二重生活を送る家庭は多い。新たな家賃支出の経済的負担は大きい。
 「(線量は)落ち着いたと言うが、福島が本当に安全だと断言できない状態は変わらない。戻れない場所に戻れ、戻らないなら補償はしない、というのはあまりに一方的すぎる」
 上野さんは怒りをにじませて訴える。「いったい誰が、こういう事態を招いたのか。われわれは古里に見捨てられるのか」
 人並みの幸せを取り戻す道のりは、なお遠い。


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2016年05月04日水曜日


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