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<原発事故>富岡は負けん!横断幕でエール

国道6号歩道橋に掲げられ、町民たちを鼓舞し続ける横断幕=福島県富岡町小浜

 「富岡は負けん!」。歩道橋に掲げられた横断幕が、東京電力福島第1原発事故で避難区域となった福島県富岡町の町民たちを鼓舞し続けている。原発事故から5カ月後、町民でホテル経営の平山勉さん(49)が取り付けた。「くじけそうになっても諦めず生き抜いてほしい」。全町避難から6年目に入り、託した願いは一段と強まっている。
 横断幕は縦90センチ、横3.6メートル。町中心部の月の下交差点にある国道6号の歩道橋に結び付けられている。
 平山さんが取り付けたのは2011年8月。避難先のいわき市から町内に一時立ち入りしたときだった。
 「ここなら、みんなにメッセージを届けられる」。交差点はNTT東日本のインターネットライブカメラで24時間映し出され、全国に避難した町民の目に留まると考えた。
 富岡町は第1原発の半径20キロ圏にあり、当時は全域が立ち入り禁止だった。
 「自由に行き来できず、帰れるかも分からない。先が見えず、みんな気持ちがどよんと沈んでいた」
 瀬戸際で踏ん張っていた平山さんは「町民自ら何かを発信しなければ」と横断幕制作を思い立ち、ホームセンターなどでペンキやビニール生地を購入した。
 「このまま終わってたまるか。震災なんかに負けず必ず復活する」。未来に誓うように湧き上がった心の叫びを「負けん」に力いっぱい込めて手書きした。
 人に会うたび「見たよ」と声を掛けられた。同じく全町避難する大熊町の町民は「何という力強い字でしょう」とブログにつづり、「勇気づけられた」と感謝する原発作業員もいた。
 現在の横断幕は2代目で、業者に作り替えてもらった。初代は12年春の暴風雨でちぎれそうになり、福島県警双葉署が回収してくれた。その後、福島県立博物館や町が震災遺産として展示。大勢の共感を得た。
 平山さんは富岡町内の現状を発信するサイトを立ち上げ、足しげく町に通う。地域住民を手助けするためボランティア団体も設立。双葉郡8町村の住民がつながれるよう、地域の現状や課題を共有する「双葉郡未来会議」も企画した。
 活動し続ける原動力は横断幕だ。「分身のような存在。見ると初心を思い出す」と自らを奮い立たせる。
 町は早ければ来年4月の帰還開始が目標だ。震災6年目に入り、帰還を諦める人もいるが、平山さんは「生きている限り、町の行く末を見守りたい」と先頭を切って帰ると決めている。
 「町をどうにかしようと、ここで頑張っている人たちもいる。(帰還を諦めた人も含め)それぞれがどんな道を選んでも、置かれた状況の中で、負けないで力強く生きてほしい」
 横断幕を通してエールを送り続ける。


2016年05月05日木曜日


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