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<適少社会>接点つくり共生へ歩む

広野町役場で開かれた安心・安全ネットワーク会議。作業員と町民の共生へ向けた環境づくりを話し合う=4月28日

◎人口減 復興のかたち[33]第7部 福島の模索(3)作業員

 生活感のない騒がしさが「人口急減」の町を包む。東京電力福島第1原発事故でほとんどの町民が町外避難した福島県広野町。今、廃炉と除染、復旧の最前線基地として多くの作業員が暮らす。
 事故直後、町が独自に出した避難指示は2012年3月に解除された。帰町者は約2700人で、東日本大震災前の人口約5500の半数に届かない。
 町内には作業員宿舎が点在する。分かるだけで約80事業所の3250人ほどが暮らす。元の町民を「新住民」が上回る。
 栃木県出身の重機オペレーター新井教太さん(44)は3畳半の部屋を毎朝5時に出発し、夕方4時ごろ戻る。「疲れて外には出られない。休みはいわきで買い物かパチンコ。町民と会う機会はない」と話す。
 同僚のダンプ運転手中村政仁さん(39)は山梨県から来た。「独身なので街コンのような行事があれば参加したい」と語る。2人は車を買うために住民票を移した。機会があれば選挙で投票に行くつもりという。

 作業員の多くはつつましく暮らす。ルールを守らない一部の作業員が町民の心をとがらせる。「ごみ出しの指定日や時間を守らない」「狭い通学路を猛スピードで飛ばす」。町には不満が相次いで寄せられる。
 廃炉と復興。事故の後始末は30年、40年と続く。新住民と融和を図るか、関わらないか。それによって町の姿は変わる。「遠ざけるのではなく、向き合うことが大事」と同町の西本由美子さん(62)は指摘する。
 西本さんが理事長のNPO法人ハッピーロードネットは昨年10月、国道6号の一斉清掃に、地元住民に加え作業員にも参加を呼び掛けた。「作業員と知り合う機会がなかったから町民は不安になる。地道に交流したい」と共生の形を探る。

 広野町の南隣、福島県いわき市の一般社団法人AFWは廃炉作業の現状について誰でも参加できる学習会を開く。「原発の情報は専門的で難しい。結果として無関心になる。現場と地域をつなぎたい」。代表の吉川彰浩さん(35)は思いを説く。
 東京電力元社員の吉川さんは12年6月まで福島第1、第2原発で計14年働いた。「廃炉や除染は日常を守る大切な仕事なのに、働く人は怖がられ、下に見られる」。仕事の価値が正当に評価されなければ、担い手がいなくなる。復興が滞る。懸念が吉川さんを動かす。
 作業員と町民のあつれきを減らそうと町は14年10月、ゼネコンや双葉署と「安心・安全ネットワーク会議」を設立した。今年3月には宿舎建設の際に計画書の提出や説明会の開催を求められる条例を作った。町内に昨年開校した県立ふたば未来学園高では、部活動で作業員との共生をテーマにした情報マップ作成が進む。
 新旧住民が良き隣人となる新しい町へ。模索は始まっている。


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2016年05月09日月曜日


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