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<奔流乱流1強政治>首相の野望 地方困惑

安倍首相(中央)と仙台市内であった憲法フォーラム(右上)、山形市内の街頭に立つ自民新人(左下)のコラージュ。背景は参院本会議場

 7月10日の投開票が有力視される参院選まで2カ月を切った。憲法改正へさらなる数を求める自民党に、野党は塊となって共闘のやぐらを組む。衆参同日選の可能性は完全には消えていない。安倍1強の奔流。それに抗(あらが)う野党の乱流。相まみえる東北の政治現場を追う。(参院選取材班)

◎参院選東北(上)改憲のジレンマ

 東北の保守系議員ら720人による君が代斉唱で、集会は幕を開けた。主催団体の代表は、日露戦争で戦艦「三笠」に掲げられた「Z旗」を振りかざし、改憲に向けた結束を鼓舞した。
 4月28日に仙台市青葉区のアエルであった「憲法フォーラム」。会場のひな壇には参院選宮城選挙区(改選数1)に立候補する自民党現職の姿もあった。
 「改憲勢力が参院で3分の2に届くよう、全国でうねりを起こしたい」。前文科相で自民党総裁特別補佐を務める下村博文の勇ましい訴えに、会場は万雷の拍手に包まれた。

<争点化に触れず>
 日本国憲法の公布から70年となる今夏の参院選では、憲法改正の是非が大きく浮上している。自民の1強体制を3年半にわたって率いる首相安倍晋三にとって、最大の「野望」とされる。
 昨年9月の党総裁選で無投票再選を決め、安全保障関連法を成立させた安倍。1月の年頭記者会見では、改憲を参院選の争点にすることを明言。3月の参院予算委員会では「在任中に成し遂げたい」と語るなど悲願達成へ意欲を隠さない。
 前のめりな首相と裏腹に、前哨戦が激しさを増す東北の現場では「改憲」のフレーズが鳴りを潜める。
 憲法記念日の5月3日。山形市の大型ショッピングセンター前で、五輪相遠藤利明(衆院山形1区)は山形選挙区(改選数1)に立候補する自民新人と並び、演説した。憲法には一切触れずじまいだった。
 「最大の争点は経済。政治の安定こそが重要だ」と語る遠藤。冷え込んだ地域活性化の必要性を強調し、「憲法問題は争点にならない」と言い切った。

<世論の6割反対>
 改憲に対する世論の反対は根強い。共同通信による直近の世論調査では6割近くが安倍政権下での改憲に反対した。
 参院選に挑む自民現職の一人は「安保関連法成立への反発が残る中、改憲を声高に訴えれば足元の票が逃げかねない」と明かす。党内の強硬路線とは一線を画し、複雑な民意の行方を読みかねている。
 自民、公明両党が参院で改憲の国会発議に必要な3分の2以上の勢力を確保するには、改選数121のうち、大勝した前回(2013年)の76議席を超える圧倒的な支持が求められる。
 改憲への世論の反発を和らげるため、安倍は大規模災害時などに内閣の権限を強化する緊急事態条項の創設を足掛かりにする構えだが、戦力不保持を定めた9条第2項の将来的な改正にも言及する。
 連立を組む公明党は一貫して一定の距離を置く。
 「恒久平和など憲法が持つ3原則は優れ、評価している。改憲の手続きは慎重に進めなければならない」。公明党幹事長の井上義久(衆院比例東北)は2日、仙台市中心部で街頭演説をし、友党の動きにくぎを刺した。(敬称略)


2016年05月11日水曜日


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