岩手のニュース

震災で失った街や人 記憶オンエア

震災前の街の思い出話で盛り上がる出演者たち

 岩手県陸前高田市の商業者が、東日本大震災で失った街や人の思い出をラジオで発信している。悲しみや悔しさを胸に、在りし日の記憶をたどる。新たな街の整備が進む中、「話すことで忘れない」とマイクに向かう。
 番組名は「舘の沖.com」。壊滅した市中心部の地名にちなんだ。市商工会青年部の有志ら4人とゲストが1時間、出演する。思い出話で盛り上がるのが「高田ラブストーリー」のコーナー。4月下旬の収録では、ゲストにゆかりのある通りが話題になった。
 薬局、レンタルビデオ店…。南から北へ、沿線の店名が次々と上がった。昭和、平成と時代はごちゃまぜ。「○○さんとこに木造船が並んでいた」「あー、あったあった」。「酔っぱらってベンチで寝たことがある」。話は尽きなかった。
 トークは「毎年7月下旬に市中心部で開かれた道中踊りで、長い休憩の合間、縁石に腰掛けながら雑談する」という設定。ありふれた陸前高田の風景が、リスナーを引き込む。
 番組は2014年9月11日、陸前高田災害FMで始まった。16年1月以降は大船渡市のコミュニティーFM「FMねまらいん」(87.5メガヘルツ)で、毎週月曜午後8時に放送している。
 陸前高田市は1700人以上が死亡・行方不明になり、震災前の話に触れてはいけないような雰囲気が漂った。被災建物が消え、かさ上げ工事が動きだすにつれ、住民の目は将来に向くようになった。「後ろ(過去)も見つつ、前(未来)に進もう」。番組にそんな思いを込めた。
 トークの中では犠牲になった知人らの名前も挙がる。出演者たちは市民の遺体を搬送するなど、つらい現実と向き合ってきた。「亡くなったけれど、一緒にいる」という気持ちを抱く。
 出演者の一人、菅野秀一郎さん(40)は「なくなった街には笑いがあり、けんかもあった。忘れかけていた人が、ラジオを聴き思い出してくれれば」と話す。


2016年05月12日木曜日


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