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<適少社会>地方のやる気 国が査定

塩釜市の佐藤市長から辞令を受け取る新採用職員。活性化を担えるか。地域は注目する=4月1日、塩釜市役所

 人口減少の拡大と東京一極集中の加速が日本の将来を危うくする。新たな地域づくりを自治体に求める国の政策「地方創生」は政府の危機意識の表れだ。安倍晋三首相は、課題先進地である東日本大震災の被災地について「地方創生のモデルとなる復興を」と号令を掛ける。地方創生は復興の追い風となるのか否か。住民や自治体、国の取り組みを追った。(「適少社会」取材班

◎人口減 復興のかたち[36]第8部創生の虚実(1)ちぐはぐ戦略

 政府の看板政策に、官僚から異論が上がる。
 「創生の交付金は使わないでやろう。復興途上の最中に新たな事業をぶち上げる余裕はない」
 農林水産省出身、岩手県山田町の鈴木裕副町長(39)は2015年4月の就任直後から町職員に繰り返し指示した。国が全国の自治体向けに用意した総額1000億円の15年度地方創生加速化交付金の活用事業を、町は申請しなかった。
 鈴木副町長は内閣府の「地方創生人材支援制度」で派遣された。国とのパイプを強めて財源を確保しようとする役場内からは、戸惑う声が聞こえたが、考えを貫いた。
 「交付金の仕組み自体が、地方の自立に結びつかない」。地方の視点から鈴木副町長は疑問を呈する。

 加速化交付金は、各自治体の地方創生計画「地方版総合戦略」に絡む先駆的事業を対象とした。国の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を「勘案」して策定することが要求され、検証と効果を国に報告する必要もある。
 国の縛りが強いシステムだ。総額1000億円を全国の自治体が奪い合う。
 岩手県沿岸の別の自治体は、水産加工品の振興策を申請したが落選した。「内容を詰め切れなかった点はあるが…」。担当者には不満が残る。
 16年度は1000億円の「地方創生推進交付金」を創設した。今度は各自治体が「地域再生計画」を策定し、国に認められると交付金を得られる。
 内閣府地方創生推進事務局は「計画の出来具合が交付金の是非を左右する。地方の意欲を駆り立てたい。結果分析もしっかりやってもらう」と強調する。

 地方の独自性発揮は国の意向次第に映る。地方は特色ある地域づくりをどう進めればよいのか。
 「既存の枠組みの活用しか慣れてない職員が多い。地方から国の仕組みを変える提言力と知恵が必要。国の言いなりでは駄目」。4月1日、新規採用職員らに辞令を交付した塩釜市の佐藤昭市長(73)は人材育成の重要性を説く。
 宮城県職員を経て、市長4期目。地方自治に携わり50年になる。地方振興をうたいながら、財源や権限を手放さぬ国の姿勢に既視感が拭えない。
 15年国勢調査で市の人口は5万4195。ピークの1995年から14.8%減った。人口減に特効薬はない。職員は地域の課題を見つけ、住民とともに解決策を探る原点に返ることが大事になる。
 「何度も現場に足を運んでほしい。市民と触れ合ってこそ人口減社会下の政策が見えてくる」。佐藤市長は国ではなく、住民の視点に立つ姿勢を職員に求める。地域再生は住民の力なしには実現しない。政策が実情に合っているのか。答えは地域の中にある。


2016年05月15日日曜日


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