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<この人このまち>農産物の可能性広げる

加工や販売方法に工夫を凝らし、柔軟に考えられるのが強み

 福島県内の農業者たちは東京電力福島第1原発事故の風評被害と格闘している。福島市内の女性組織「ふくしま女性起業研究会」は、東京の学生たちに安全性をアピール。女性の視点を生かした取り組みにも力を入れる。会長で果樹生産者の渡辺美紀子さん(59)に聞いた。(福島総局・阿部真紀)

◎ふくしま女性起業研究会会長・渡辺美紀子さん(59)

 −原発事故の風評被害にさらされています。
 「東日本大震災後の原発事故で農産物が売れなくなった当初は『どうすっぺ』と精神的にも追い込まれました。それでも仲間と思いを共有でき、それが心の支えとなって『みんなで前を向いていこう』と決意し、生産を続けてきました」
 −信頼性を取り戻すために取り組んだのは。
 「昨年は『女子農力向上委員会』を展開しました。県と連携した事業の一環で、県内や首都圏の女子大生に田植えや果物の収穫を体験してもらいました。参加者が会員制交流サイト(SNS)などで県産品の安全性や魅力を発信していきたいと言ってくれ、うれしくて頼もしく感じました」
 「リンゴの売り上げは順調に回復し、今では震災前以上になりました。一時は県外産を買っていた人たちも地元産のおいしさを改めて実感し、再び求めてくれるようになりました」
 −研究会の発足時期やメンバーは。
 「発足は約20年前。女性による農業活性化などを目的に県が開いた勉強会をきっかけに、参加者でつくりました。リンゴやモモといった果樹、コメなどを生産する20人が現在のメンバー。学びたいことを出し合い、年2回の視察研修を続けています。農家レストランを訪ねたり、訪問先でみそを造ったりしてきました」
 −どんな思いで農業を。
 「かつて海外研修で訪れたドイツやイタリアでは、女性スタッフだけで運営しているワイナリーがありました。子育てのために農業に従事するシングルマザーにも会いました。みんなプライドを持っており、高い意識で農業に従事する大切さを痛感しました」
 −女性の視点は農業にどう生かせるでしょうか。
 「果樹の味を追求する職人かたぎが男性だとしたら、素材の可能性を広げられるのが女性。加工や販売方法に工夫を凝らし、柔軟に考えられるのが強みです」
 「最近は夫が丹精込めたリンゴでピューレやタレを作って販売しています。消費者の声に耳を傾け、今後も挑戦を続けていきます」


[わたなべ・みきこ] 56年福島市生まれ。緑が丘高(現福島東陵高)卒。80年に結婚を機に農業に従事。自宅敷地で渡辺農園加工所を経営する。


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2016年05月16日月曜日


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