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<想定外に備える>煩雑な手続き 足かせ

みなし仮設住宅の相談窓口に訪れる被災者。煩雑な手続きは東日本大震災から変わらないままだ=12日、熊本県益城町の中央公民館

◎熊本地震1カ月(3)みなし仮設

 熊本地震では、東日本大震災の被災自治体が教訓を生かそうと訴えた課題が改善されず、再び被災者の前に立ちはだかろうとしている。民間賃貸住宅を無償で被災者に提供するみなし仮設住宅の入居までの煩雑な事務処理の問題だ。

<低コスト利点>
 熊本県益城(ましき)町の看護師池部京子さん(41)は12日午前、2歳の長女を連れて、みなし仮設の町の相談窓口に一番乗りした。6月半ば、長男が生まれる。
 2年半前に買った築40年の中古住宅は2回の震度7の揺れで傾き、倒壊の恐れがあると判定された。近所の実家も被災し、夫、両親と共に近隣の老人ホームに身を寄せる。「仮設住宅は完成まで時間がかかるし、家族6人では手狭。早く住まいを確保したい」
 地震発生から1カ月が過ぎ、喫緊の課題は避難所対応から仮の住まい確保へ移る。みなし仮設はプレハブに比べて早く入居でき、居住環境に優れてコストも割安な利点がある。
 民間賃貸住宅が比較的多い熊本市はプレハブ450戸に対し、約1500戸のみなし活用を想定。15日までに延べ3603件の相談と45件の申し込みを受けた。ただ、入居までには相当な時間がかかる見込みだ。

<簡素化訴える>
 震災で仙台市は、みなし仮設のメリットを生かし切れず、苦い経験をした。煩雑な手続きに時間を取られ、申し込みから入居まで1〜2カ月を要した。
 仙台市仮設住宅室によると、提供したみなし仮設は最大9838戸とプレハブの6.5倍に上った。契約には被災者と都道府県、管理事務を担う市町村、不動産業者、家主の5者が関与する。申し込みから契約完了まで16段階を踏むため、書類がその度に行き来。県と国との調整もあった。
 教訓を踏まえ、仙台市は震災後、被災者と家主が直接契約した上で、都道府県が被災者に家賃補助する仕組みの導入を国に要望。手続きを大幅に簡素化できると訴えた。会計検査院、内閣府の有識者会議も家賃補助導入を促した。
 震災から5年。制度は見直されないまま熊本地震は起きた。奥山恵美子仙台市長は「震災時、膨大な時間とマンパワーを手続きに奪われた。熊本でも繰り返すのか」と憤る。

<柔軟な運用を>
 家賃補助が導入されないのは、被災者に直接金銭が渡ることに国が極めて慎重だからだ。内閣府被災者行政担当の石井洋之主査は「現金給付はモラルハザード(倫理観の欠如)を招きかねない。災害救助法の原則である現物給付が最も確実な支援」と説明する。
 益城町の池部さんは自ら探した物件の資料を町の窓口に持参した。家賃上限の6万円を超えるが超過分は自己負担のつもりだった。が、上限を超える物件は一切適用されないと告げられた。「均一性、平等性の観点から認められない」(石井主査)との見解だ。
 一刻も早く生活再建に踏み出したい被災者に、原理原則がブレーキをかける。「もう少し柔軟に運用してほしい。出産に間に合わないかも」。池部さんは焦りを募らせる。


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2016年05月17日火曜日


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