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<適少社会>豊かさ発見 長期戦略で

地元住民と桜の苗木を植える学生たち。若者の移住実現には、地域に愛着を抱いてもらえる仕掛けも問われる=4月16日、釜石市鵜住居町の日向復興住宅

◎人口減 復興のかたち〔39〕第8部創生の虚実(4)移住の夢

 沖縄県の八重山諸島・鳩間島出身の秋本純希さん(27)は、今年夏に岩手県釜石市に移住する決意を固めた。
 東京で飛行機整備士として働き、東日本大震災後にボランティアで被災地に足を運んだ。釜石で漁師らと懇意になり、年4カ月も滞在するようになった。
 「気さくな人柄がいい。山も海も川も星空もきれい」と釜石にほれ込んだ。移住後は地元農家と連携し特産の「甲子(かっし)柿」を使った新商品開発に取り組む。「地元の人が当たり前だと思っている自然、風土こそが大きな魅力だ」
 震災を契機に移り住むケースが現れ、沿岸被災地は外から人を呼び込む施策に熱心だ。地方創生の「地方版総合戦略」には移住促進策を相次ぎ盛り込んだ。
 岩手県陸前高田市は昨年7月、大手シンクタンクの協力で、陸前高田を訪れたいと希望する首都圏在住者1000人にウェブアンケートを実施した。25%強が移住候補地に挙げた。市企画政策課は「この状況下で、結構いるという感触」と驚く。
 中心部はかさ上げ工事の真っ最中で、新市街地の姿は見えない。移住者を今すぐに次々迎える基盤は整っていない。「関心をつなぎ留めたい」。市は情報発信を強化する考えだ。

 民間団体も長期的な視点で移住に結び付く交流事業を積極的に展開する。
 4月中旬、聖学院大(埼玉県上尾市)の学生団体「復興支援ボランティアチーム」の9人が釜石市を訪れた。災害公営住宅で桜の苗木を植樹し、住民らとの交流会に参加した。
 年3回は釜石を訪れる。「あなたたちのような人が来ないと、集まる機会がないのよ」と高齢者らから感謝された学生たち。「僕たちを受け入れてくれるから、何度も訪れたくなる」と3年の金子朋寛さん(20)は言う。
 同大ボランティア活動支援センター所長の阿部洋治教授(67)=キリスト教教育=は、チームの中から釜石への移住者が生まれることを願っている。
 「触れ合いを通じて、工夫次第で豊かに暮らせる価値が地方にこそあると気付いてほしい」

 釜石市は総合戦略を「オープンシティ戦略」と名付けた。民間団体とも連携して外部からの人材流入を促し、移住者の増加を図る。人口3万6812(15年国勢調査)からの減少カーブを少しでも緩やかにしたい考えだ。
 聖学院大の学生を受け入れた地元の民間団体「三陸ひとつなぎ自然学校」の伊藤聡代表(36)は「釜石で何か面白そうなことをやっていれば人が集まる。そこから移住者が生まれればラッキー、という気持ちでいたい」。肩の力を抜いて、長期戦を乗り切る構えだ。


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2016年05月18日水曜日


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