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<想定外に備える>都市被害 対策議論を

熊本地震では、ずれ動いた断層が地表に現れた=4月17日、熊本県益城町

◎熊本地震1カ月(4完)活断層のずれ

 震度7が2回起きた熊本地震は、居住空間の直下の断層が震源となった。
 「ガン」。熊本県益城(ましき)町の吉岡アヤコさん(83)は4月14日夜、自宅で就寝中に突然、突き上げる激しい揺れに驚いた。「大きく揺さぶられ、ベッドにつかまった」と振り返る。

<国内に2000以上>
 活断層による地震は、強い揺れだけでない。活断層がずれることで建物が壊れたり、傾いたりする被害が加わる。被害の範囲は活断層に沿って広がる特徴が、熊本で見られた。
 活断層は国内に2000以上あるとされるが範囲や規模、周期は明確ではない。発生確率も一般には分かりにくい。国の地震調査研究推進本部(地震本部)が公表する30年以内に活断層が動く確率は、前震を起こした日奈久(ひなぐ)断層が「ほぼ0〜6%」、本震の布田川(ふたがわ)断層は「ほぼ0〜0.9%」だった。
 岩手大の斎藤徳美名誉教授(地域防災学)は「千年から数万年と長い活動期間を基にした確率は実態にそぐわない。未知の活断層も多く、いつどこで起きてもおかしくない」と警鐘を鳴らす。

<仙台直下注視>
 活断層のずれが人口密集地の直下で起きると、都市機能への打撃は避けられない。活断層の専門家が特に注視するのは仙台市を横切る長町−利府断層だ。30年以内に動く確率は「1%以下」。新幹線の高架や国道、地下鉄がまたぎ、宮城県が整備予定の広域防災拠点や市宮城野区役所も近い。
 百万都市の足元にある活断層に、備えは十分か。
 仙台市が2002年にまとめた長町−利府断層の被害想定によると、地震規模はマグニチュード7.0〜7.5で、阪神大震災や岩手・宮城内陸地震級。断層帯は幅約20キロ、長さ約40キロと市街地のほぼ全域を含む。ただ、断層がずれるリスクまでは考慮していない。
 熊本地震を受け市防災計画課は「情報を収集中」とするが、「専門家でも断層の評価は分かれており、総合的な検討が必要だ」と現時点での対応には慎重な姿勢を崩さない。

<条例で規制も>
 数千年に一度の被害に対する備えは、土地利用計画やまちづくりにも影響する。「現実的ではない」など捉え方はさまざまだが、備えに動く地域はある。
 徳島県は12年、中央構造線断層帯を震源とする直下型地震に備え、活断層上の幅40メートルの区域で、学校や病院の建設を規制する条例を全国で初めて制定した。熊本地震後、山形県は活断層付近の県有施設の将来的な移転方針を示した。米国では活断層に沿った一定の範囲で新築や土地利用を規制する州の法律もある。
 活断層と土地利用の規制に詳しい山形大大学院教育実践研究科の村山良之教授(地理学)は「建築物の耐震基準は揺れに耐えられるが、活断層の変位(ずれ)は救えない」と指摘。「まずは活断層上にある学校などの公共施設に何らかの対策を取るべきだ。もっと議論が必要」と訴える。
 断層近くの自宅が倒壊した益城町の島田公好さん(77)は「今思うと断層の上に住むのは危ない」と言う。被害が出て初めて気付くリスクの大きさを、熊本地震が教えてくれたのではないだろうか。(震災取材班)


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2016年05月18日水曜日


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