福島のニュース

<適少社会>安易な国策依存 不利益

丘にそびえる福島第1原発の廃炉研究拠点「楢葉遠隔技術開発センター」試験棟。「イノベーション・コースト構想」の一角を担う=4月中旬、福島県楢葉町

◎人口減 復興のかたち[40]第8部創生の虚実(5完)大事業

 「罪滅ぼし」の思いを持ち続けている。「新しい価値をつくり、社会を改革できる人材を育てたい」
 南相馬市の一般社団法人「あすびと福島」代表の半谷(はんがい)栄寿さん(63)は東京電力の幹部社員だった。サッカー施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)の整備を指揮し、2010年6月まで執行役員を務めた。
 「心から申し訳ないと思っている」。東京電力福島第1原発事故で故郷の南相馬市小高区も避難区域となった。ボランティア活動を続けるうち、復興を担う若者の育成こそが重要だと気付いた。
 14年5月から県内高校生の社会起業塾を開催する。「農業の信頼を回復したい」との志を持つ高校生らは昨年「ふくしま食べる通信」を発刊した。農家を取材して記事化した冊子を食材付きで届ける。
 起業塾の生徒には高校生50人が登録する。「小さなことでも挑戦と実践を繰り返して成長できる。育った人材が憧れの的となり、さらに挑戦者が増える連鎖をつくりたい」と期待を込める。

 地に足がついた地域づくりの一方で、超大型事業による地方創生策も展開されようとしている。
 岩手県南、宮城県北の自治体は超大型加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の誘致を地方創生の地方版総合戦略に載せた。
 北上山地に巨大な素粒子研究施設を造る。周辺都市に多数の海外研究者らが居住し、関連産業が集まるなど大きな波及効果が見込めるという。
 総合戦略に誘致活動を盛り込んだ気仙沼市は「気仙沼港が研究機器の陸揚げ港になる。まちづくりが大きく変わる」(震災復興・企画課)と力が入る。
 だが、ILC建設費は研究者らの試算で9900億円を超える。国は誘致に消極的で、「夢とロマン」(宮城県担当者)の段階を脱していない。

 その国も、福島県浜通り地方では、廃炉研究に加えてロボットや新エネルギー開発など最新技術産業の一大集積地「イノベーション・コースト」の実現を主導する。
 経済産業、文部科学、農林水産の各省にまたがる構想で「事業の完了期や費用は見えていない」(内閣府)。完成形は霧の中だ。
 東大大学院の金井利之教授(自治体行政学)は「大プロジェクトに頼ること自体が、地域再生のアイデアがない証拠。復興のどさくさで進む公共事業では、地域の利益にならない」と厳しい目を向ける。
 中央が求める施策、中央が敷いたレールに依存しない地域づくりこそ、震災と原発事故で教訓を得た被災地が人口減社会を生き抜く道ではないだろうか。(「適少社会」取材班)


関連ページ: 福島 社会 適少社会

2016年05月19日木曜日


先頭に戻る