岩手のニュース

<あなたに伝えたい>募る悔いせめて遺品欲しい

アルバムを眺める徳夫さん。「写真もあまり見ないんだ。おっかあのことばかり考えてしまうから」

◎小林徳夫さん(釜石市)から信子さんへ

 徳夫さん おっかあのことはなるべく考えないようにしている。東京で20年近く働き、震災の9カ月前に釜石に戻った。家を離れている間はなかなか帰れなかった。これからは一緒に暮らし、体の不自由なおっかあを少しでも楽させたいと思っていたら津波だ。悔いが募ってくる。
 この年齢で土木作業員をやっているのも、汗を流して一生懸命体を動かせば無心になれるからだ。でも家では寂しくて、生きていることに意味がないと感じるときもある。以前は理解できなかった自殺する人の気持ちが、今なら分かるよ。
 おっかあとは北海道の造船所で働いているときに知り合った。地元で美容師をやっていて、紹介されて会ったらすぐに実家に呼ばれた。10日後に結婚が決まり、釜石に連れて帰ったんだ。27歳だった。
 ぱっと夫婦になったけど、仲は良かった。海水浴とかに行ったね。時々、自宅で友人の髪を切ってあげていた姿を思い出す。生き生きしたいい顔をしてたなあ。
 不在だった俺の代わりに2人の子どもをしっかり育ててくれて、感謝しかない。気持ちのいい息子と娘だよ。あとは何か一つでも遺品が欲しい。自宅は全壊し、捜せなかったんだ。
 昨年5月に災害公営住宅の自治会が発足し、会長になった。部屋にこもっている高齢者が多い。おっかあのことを引きずっている俺と同じ状態なんだろう。行事に出て気を紛らわしてほしいが、なかなか参加者が増えない。諦めたらそれっきりなので、粘り強く声を掛け続けたい。
(日曜日掲載)

◎長年家離れ、これから楽させるはずだった

 小林信子さん=当時(61)= 夫の徳夫さん(71)と暮らしていた釜石市箱崎町の自宅で津波に襲われ、行方不明になった。病気で体が不自由だったため、地震後に親戚が助けに向かった。揺れの影響か玄関の戸が開かず、中から「駄目だから、もう逃げろ」と避難を促したという。


2016年05月22日日曜日


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