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<津波時引き渡し>子ども守る 指針三県三様

 東日本大震災の発生後に学校側から保護者らに引き渡された児童や生徒が多数亡くなった反省を踏まえ、岩手、宮城、福島の被災3県が津波発生時の引き渡しの指針を見直した。3県の新指針は「いかに命を守るか」という目的は同じだが、具体的な対応の違いが際立ち、三者三様の思いがにじむ。引き渡し後の犠牲を巡っては3月、東松島市野蒜小の訴訟で学校側の法的責任が初めて認められた。震災5年を経た今も学校現場の模索が続く。(報道部・斉藤隼人)

◎専門家[家族側と事前合意を」

<過失認める判決>
 「安全を確認できない限り児童を引き渡すべきではなかった」。仙台地裁で3月24日にあった野蒜小津波訴訟の判決は、校長の指示で同級生の親に引き渡された後に津波にのまれて亡くなった小学3年の女児=当時(9)=について、学校の過失を認める司法判断を示した。
 判決は、女児の帰宅ルートが必ず津波浸水域を通らなければならない点を挙げ、「女児に危険が及ぶことは具体的に予見できた」と指摘。「児童の安全確保」を最優先するよう求め、「早く児童を安心させたかった」とする学校側の主張を退けた。

<事例踏まえ策定>
 3県が震災後に示した指針の特徴は表の通り。引き渡し後に犠牲が出た事例や逆に学校にとどめ、亡くなった事例などを踏まえた結果、導き出された答えは三者三様となった。
 最も厳格なのは岩手県。同県教委は「津波警報が解除されるまで児童生徒を引き渡さず、相手も保護者に限る」とマニュアルに明記した。保護者と連絡が取れない場合は、避難場所で待機させるという。
 小野寺哲男学校教育室学力・復興教育担当課長は「緊急の判断を迫られた場合、分かりやすさが何より大切。校長不在でも基準が明確なら誰でも即断できる」と話す。
 宮城県教委は「マニュアル通りに行動し、犠牲が出た事例もある」(スポーツ健康課)として詳細をあえて示さず、学校現場に判断を委ねた。指針は「引き渡さず、保護者とともに学校にとどまることもある」などと示すが、「あくまで一例」と言う。
 福田功スポーツ健康課長補佐は「地理的条件などから必要な対応は一律ではない。県が行動を明記すれば、現場はそれに倣う恐れがある。学校が自主的に考えてほしいとの思いも込めた」と解説する。
 福島県教委は事前の保護者の承諾がなくても「子どもとの関係が確認できれば引き渡すことはある」(健康教育課)とした。不安解消を重視するが、引き渡し前には安全指導の徹底を求めている。
 群馬大大学院の片田敏孝教授(災害社会工学)は「岩手県は学校現場に迷いが生じるリスクを完全に排除した。宮城県は学校側の主体性を信じた指針だが、全ての学校が最適なルールを策定できるか若干の不安も感じる」と指摘。「各学校は震災の反省を踏まえて議論を尽くし、保護者と合意形成しておくことが重要だ」と強調する。
 

 [東日本大震災発生後の引き渡し] 河北新報社の調べでは、被災3県の小中学校と特別支援学校に在籍していて犠牲になった児童生徒計351人のうち、引き渡し後だったのは120人(34%)。内訳は宮城91人、岩手20人、福島9人。津波情報を把握しないまま引き渡したことで多くの犠牲を招いた。国の調査では、震災時に安全が確認できるまで児童生徒を待機させた学校は半数以下だった。


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2016年05月23日月曜日


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