広域のニュース

<適少社会>保育環境改善 格闘続く

子育てサロンを開いた曽山さん(左)。暮らしを大切にした働き方の発信を目指す=東京都杉並区の「こどもコワーキング babyCo(ベビコ)」

◎人口減 復興のかたち〔42〕第9部一極集中の足元(2)ママ一揆

 子育て世代が安心して働けない街、東京。母親たちの「一揆」は2013年2月、杉並区で始まった。
 区内の認可保育所の13年度定員1135人に対し、応募は2968人に達した。倍率は2.61倍で、前年度の2.44倍を上回った。
 改善しない保育環境に、育児休業中の女性約50人が区役所前で訴えた。1次選考に落ちた68人は集団で異議を申し立てた。動きは各地に飛び火し「保育園一揆」と呼ばれた。
 中心となった同区の曽山恵理子さん(39)=福島県南会津町出身=は第2子の育休中だった。自ら作った子育て情報の交換サイトで「妊娠中から保育園を探す『保活』に追われるのはおかしい。みんなで声を上げよう」と呼び掛けた。

 一揆は区を動かした。11〜13年度の新設認可園は6園だったが、14〜16年度は22園が新設された。
 それでも入所希望者の増加には追い付かない。来春、同区の待機児童は500人を超える見通し。厚生労働省によると、15年4月1日現在の全国の待機児童は2万3167人で、東京が33.7%を占める。人口とともにひずみも集中する。
 8カ月の子を育てる杉並区の母親(36)は「認可園に入る優先順位を上げるため、7月にいったん認可外に預ける。本当は1歳まで育休を取りたかったのに」と明かす。
 東京は女性1人が生涯に産む子の数を示す合計特殊出生率が1.17(15年)と、47都道府県で最も低い。都外からの若い世代の流入が人口増を支え、子育て環境の不備と相まって待機児童の問題を生む。
 増え続けてきた人口も都の推計によると、20年からは減少に向かう。少子高齢化で生産年齢人口(15〜64歳)が総人口に占める割合は、10年の68.3%から35年の62.7%に低下する。
 人口が減っても、子育てを取り巻く問題は残る。女性活躍推進法が今年4月施行され、労働力不足の解消を狙う。共働き世帯の割合は今後も増える見通しだ。

 「女性の働き方が、長時間労働を前提とした男性に近づく」。曽山さんは危ぶむ。男女問わず、育児や介護と仕事を無理なく両立できてこそ、安心して暮らせる成熟社会ではないか。
 曽山さんは13年11月、IT企業を退職し、区内に子育て世代の交流サロンを開いた。待機児童問題にもう一歩踏み込んで関わろうと思った。育児を巡り職場で嫌がらせを受けたことも決断を後押しした。
 サロンではキャリアカウンセラーの経験を生かし、母親たちの就労や保活の相談に応じる。保育園への優先順位が低い在宅型の仕事を持つ母親には、保育付きの仕事場として提供する。
 古里の南会津では兼業農家が農作業に有給休暇を使う。祭りで会社を休むのも珍しくない。「日々の暮らしを大切にした働き方を東京でも実現できないか」。外からの視点も交え、曽山さんは思案する。


関連ページ: 広域 社会 適少社会

2016年05月26日木曜日


先頭に戻る