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<適少社会>近所の支えで孤立防ぐ

山崎さん(右)が主宰する「サロンひだまり」。和やかな語らいが高齢者の心を支える=東京都足立区

◎人口減 復興のかたち[43]第9部一極集中の足元(3)老いる街

 入り組んだ路地に木造住宅が密集する。築半世紀近い団地が棟を連ねる。東京都足立区には「昭和」が色濃く残る。再開発や大学キャンパスの増加でにぎわう地域もあるが2015年、東京23区で唯一、人口が減った。15年国勢調査の人口は67万1108。前回10年調査の1.8%減だった。
 65歳以上の高齢化率は15年、24.2%と23区で2番目に高い。1985年は3番目に低い7.5%。若さあふれる区だった。昭和30年代から数多く造成された公営・公団住宅の住民が年を重ね、率を押し上げた。
 112団体でつくる区女性団体連合会の中村富美子相談役(72)は言う。「地域活動に若者の参加が少ない。消防団や町内会、商店街も高齢者が担っている」

 都と区市町村でつくる「東京の自治のあり方研究会」は15年、東京の高齢化が30年代に急加速するとの報告を出した。50年の75歳以上人口は10年の2.2倍。全国の1.7倍を上回る。
 特徴は単身高齢世帯の多さ。国立社会保障・人口問題研究所の14年推計は、35年の65歳以上世帯に占める単身世帯の割合を全国の37.7%に対し、東京は44.0%と見込む。
 足立区は13年、高齢者の「孤立ゼロプロジェクト」を始めた。区条例で本人の同意なしに名前や住所を町内会などに提供できるようにした。対象は70歳以上の単身世帯と75歳以上のみの同居世帯。福祉の目が届く介護保険の利用者は除いた。
 情報提供を受け、町内会などが訪問する。地縁を築き直す狙いもある。孤立の恐れがあると地域包括支援センターが再調査し、住民ボランティア「絆のあんしん協力員」の定期訪問や地域の集まりを紹介する。

 協力員は現在約1000人。その一人、山崎昭子さん(74)は、近所の高齢者にも寄り添おうと13年5月、自宅で「サロンひだまり」を始めた。
 早坂光枝さん(69)は夫の禎祐(ていすけ)さん(75)と月2回のひだまりを心待ちにする。東京電力福島第1原発事故で福島県大熊町から息子の住む足立区に転居した。
 大熊にはたくさんの友人がいて、土いじりもできた。「東京ではテレビを見るか、寝るかしかない」。孤独に悩み、社会福祉協議会に相談すると、ひだまりを紹介された。光枝さんは「気兼ねなくおしゃべりするのが楽しい」と感謝する。
 自殺防止や防犯、ごみ屋敷対策。孤立ゼロプロジェクトは区が力を入れてきた社会問題と地続きにあると、区絆づくり担当課の瀬崎正人係長は説明する。「共通するのは当事者の社会的な孤立。行政が『おせっかい』になり、高齢者を見守ろうとの機運が高まった」
 孤立の危険性。地域で支え合う大切さ。東北の被災地が先取りした高齢化、人口減に伴う課題は、一極集中で繁栄する都会でも膨らんでいる。


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2016年05月27日金曜日


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