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<地震地域係数>数値低い熊本や新潟で大地震

 熊本地震を契機に、大型建築物の構造計算に用いる地震地域係数の見直しを求める声が専門家から上がっている。過去の地震を基に地域別に定めた係数は1980年以降変わっておらず、新潟県や熊本県など、係数上は耐震性能を緩和できる地域で大地震が目立つためだ。識者は「地震が少ないお墨付きを国が与えたと誤解される」として、係数が低い地域の備え全般への悪影響を懸念する。(報道部・藤本貴裕)

 各地の地域係数は地図の通り。4段階に分かれ、建築基準法の基準通りの1.0が東北の太平洋側や関東、関西など。数値が小さいほど対応する地震力を割り引くことができる。
 熊本県は0.9と0.8、新潟県中越地震(2004年)があった新潟県は0.9だった。東北では青森県の津軽・下北地方、秋田、山形両県、福島県の会津地方と中通り南部が0.9となっている。
 地域係数は戦後復興期、大量の建築物の建築効率を上げる狙いで算定された。根拠は、過去千数百年に発生した地震の規模や被害、発生確率に関する当時の知見だった。
 構造計算ソフト開発を手掛けるストラクチャー(東京)の野家(のいえ)牧雄社長(65)は「阪神大震災以降に注目されるようになった活断層などの知見は反映されていない。係数は建築費用低減のために使われる例が多い」と話し、地域係数の廃止を訴える。
 専門家の間では、地域係数が本来の建築物の構造計算以外にも影響を与えているとの見方がある。
 地域係数は守るべき最低水準を意味するが、「本来の基準を低減しても構わない」と解釈する建築関係者もおり、「低減可能な地域は『あまり地震が起きない』と誤解を与えかねない」との指摘がある。熊本地震では、過去の地震の少なさが備えの意識を低下させたと言われている。
 地域係数を独自に引き上げる自治体もある。05年の福岡県西方沖地震を受け、福岡市は08年、0.8から1.0に引き上げる条例を施行。静岡県は東海地震を想定し、全域の1.0を1.2とする指針を定めた。
 一方、東北各県は「東日本大震災時は建築基準法の範囲で対応できた」(宮城)「課題に挙がっていない」(山形)「理由はない」(福島)など消極的だ。
 国土交通省建築指導課の担当者は「熊本地震で倒壊した建物は多くが2階以下の木造住宅やアパート。(構造計算の必要はなく)地域係数と関係ない」と説明しつつ、「国交省や大学、日本建築学会などの現地調査を踏まえ、地域係数を含めた耐震基準の見直しの必要性を検討する」と話した。

[地震地域係数]マンションなど鉄筋コンクリートの建物や3階以上の木造建築物で義務付けられる構造計算をする際、設計上の地震力を地域によって割り引くことができる係数。国の告示で1952年に定められ、宮城県沖地震(78年)後の耐震基準強化の一環で80年に見直された。設定根拠は故河角広・東大地震研究所教授が作成した「河角マップ」(51年)とされる。2階以下の木造住宅は対象外で地域係数はない。


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2016年05月30日月曜日


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