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<道しるべ探して>古くて新しい生活謳歌

インターネットで資金を募って「村」を興した武田さん(右)と半田さん=秋田県五城目町のシェアビレッジ

◎とうほく共創 第1部気付き(中)みんなの村

 57世帯が暮らす秋田県五城目町の馬場目町村集落に2015年5月、突如として「村」が出現した。築133年のかやぶき古民家を改修した宿泊施設「シェアビレッジ」だ。
 北秋田市出身の「村長」武田昌大(まさひろ)さん(31)が「これこそ日本の原風景」と982平方メートルの敷地を見渡す。庭先では見事な枝ぶりの春モミジが、若葉を芽吹かせていた。
 ここでは古民家を「村」、会員を「村民」、年会費を「年貢」と呼び習わす。
 「100年後もこの風景を残したい」と言う武田さんに呼応して全国45都道府県の約1600人が村民となり、年貢3000円を納める。
 年貢を納めた村民は、村の宿泊権を有する。村では村民と地元のお年寄りが一緒に郷土料理を作り、かやを刈り、障子を張る。村祭りには全国から村民300人が押し寄せた。
 ガード下の赤ちょうちんで、繁華街のイタリアンレストランで、「寄合」という名の村民交流会が定期開催されている。人口9903、高齢化率42.3%の五城目町は、住民も知らぬ間に全国規模でにぎわっていた。
 「秋田が嫌い」で一度は東京のゲーム会社に就職した武田さんだった。久しぶりに帰省したふるさとは人口減少率、高齢化率ともに全国ワースト。寂れていた。
 そんなとき解体間近の古民家に出合った。「壊したら二度と元に戻らない。この風景がなくなるのは、もっと嫌だ」
 インターネットで小口の出資を募り、修繕費用約570万円を集めた。嫌いだったふるさとのために。東日本大震災からの事業再建でも脚光を浴びた手法だ。
 村では、移り住んできた若者たちが古くて新しいライフスタイルを謳歌(おうか)している。
 管理人として宿泊客と寝食を共にする「家守(やもり)」半田理人(まさと)さん(26)は、五城目町に隣接する井川町の生まれ。群馬の大学を卒業後、銀行員や大学職員を経てUターンした。「100年後を見据えて地域に根差すプロジェクトにやりがいを見つけた」と言う。
 五城目町と同様のシェアビレッジが今月21日、香川県三豊市にオープンした。今後も全国展開し、ゆくゆくは「消滅の危機がささやかれる地方をつなぐ100万人の村にしたい」と武田さんは構想を描く。
 ネットワーク型の村が、拡大していく。


2016年05月31日火曜日


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