福島のニュース

障害者16人が主戦力に 雇用の可能性探る

手作業でゴム印を作る社員=福島市のとうほうスマイル

 障害者が働きやすい環境づくりが企業に求められている。今年4月には障害者差別解消法、改正障害者雇用促進法が施行された。障害者雇用率が決して高くない東北で、環境をどう整えていくか。積極的に取り組む東邦銀行の特例子会社を取材した。(福島総局・阿部真紀)

<配慮感じる社内>
 出入り口には車いす用のリフトがある。社内は通路の広さが目に付く。誰もが楽に行き来できるようにとの配慮を感じた。
 福島市の東北自動車道福島飯坂インターチェンジ近く。東邦銀をPRするポスターや書類の印刷などを担う特例子会社「とうほうスマイル」は、障害者16人が主戦力となっている。
 全員が同じフロアで生き生きと働く。ポスター製作に関わる阿部陽一朗さん(30)は「細かい作業が多いが、正確性を一番に責任ある仕事を心掛けている」と胸を張る。
 抱える状況はさまざまだ。車いすが必要だったり、聴覚や知的障害があったり。阿部さんは病気の後遺症で自由に話しにくい。
 会社設立は2012年3月。前年の東日本大震災で障害者の雇用環境が厳しさを増したのを受け、北村清士頭取が推し進めた。
 厚生労働省によると、東北の障害者雇用の状況(15年)は表の通り。従業員50人以上の企業は障害者の割合(雇用率)が2.0%以上と義務付けられているが、県平均は6県とも下回り、宮城は全国最低だ。各県とも達成した企業の割合は5割前後にとどまる。
 特例子会社はこうした状況を改善する方策の一つとされる。東邦銀も障害者雇用率が3月末で2.13%と義務をクリアしている。
 特例子会社の経営には障害に対する理解が当然ながら不可欠だ。とうほうスマイルは福島県内の特別支援学校などと連携。実習として生徒を受け入れながら雇用拡大に取り組んできた。

<大きく意識変化>
 業務の幅も広げてきた。行員の名刺やゴム印作りに始まり、小切手やクレジット機能付きキャッシュカードなど顧客が直接利用するものの製造という重要分野に進出している。
 取り組みの結果、従業員の意識も大きく変化した。
 重度の心臓病がある入社5年目の樋口優佳さん(24)は「仕事を通じ『できる』という実感を得られ、(病気を抱える)自分を受け入れられるようになった」と語る。
 樋口さんは聴覚障害のある同僚と話すため、独学で手話を身に付け、社内の手話通訳を任されるようになった。先輩社員として「今後入ってくる後輩たちにも仕事の楽しさを伝えていきたい」と笑顔を見せる。
 とうほうスマイルの経営陣は、業務内容の拡大を常に模索している。
 「健常者の代わりを押し付けるのではなく、それぞれが『できること』から新たな業務の可能性を探る発想の転換が重要」と大高敏雄常務。一人一人の特性を見極めることが障害者雇用の拡大につながると指摘する。

[特例子会社]障害者雇用促進のため、企業が障害者に配慮して設立する子会社。障害者5人以上など一定の要件を満たせば、雇用する障害者を親会社の従業員とみなし、障害者雇用率の向上につなげられる。全国で約420社(2015年6月現在)あるが、東京、大阪など大都市圏に集中する。


関連ページ: 福島 社会

2016年06月03日金曜日


先頭に戻る