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<適少社会>教育旅行 ニーズが急増

岩手県沿岸部を走る三陸鉄道南リアス線の震災学習列車。筑波大付属駒場中の生徒が津波被害の恐ろしさについて説明を受けた

◎人口減 復興のかたち[48]第10部ヨソモノの力(4)被災地で学ぶ

 抜けるような晴天に恵まれた5月18日、東京の筑波大付属駒場中の3年生48人が三陸鉄道南リアス線の震災学習列車に乗り込んだ。盛駅(岩手県大船渡市)発釜石駅行き。三陸鉄道(岩手県宮古市)が企画する貸し切りの臨時列車だ。
 語り部役の職員の説明に耳を傾けながら、生徒たちが車窓から見える三陸の青い海と、かさ上げが進む東日本大震災の被災地の様子をデジタルカメラやスマートフォンで撮影する。
 「5年前のテレビの映像を思い出した。ここに来て9メートルの津波の実感が湧いた」。初めて被災地を訪れた山田耀(あきら)さん(14)が語り部の言葉をかみしめた。
 駒場中は60年前から岩手県を中心に東北地方を修学旅行で訪れている。グループ研究の訪問先で親切に対応してもらえ、予想以上の成果を得られるのが岩手の魅力という。震災で旅行先を別の地方に移したが、2013年には東北に戻し、震災学習を旅程に加えた。

 岩手県沿岸では駒場中のような復活組に加え、震災学習を目的とする県外からの修学旅行が増えている。岩手県釜石市は顕著で、10年の110人から14年は2045人に急増した。
 一方で、団体客を受け入れられる宿泊施設の不足も浮き彫りになった。釜石市で100人規模の団体が宿泊できる4施設は復興関連の需要が高く、団体旅行には回らない。
 駒場中の生徒は震災学習列車に乗る前日、宮城県気仙沼市に宿泊した。同校の梶山正明教諭は「沿岸部で宿舎が増えれば、行程の自由度が増して震災学習を取り入れ易くなる」と教育サイドのニーズを代弁する。
 旅行代理店も、大型宿泊施設のある岩手県花巻市や気仙沼市を拠点にしながら、岩手県沿岸部に移動する時間のロスをどう減らし、震災学習を効率的に組み込めるか頭を悩ませる。

 需要の揺り戻しも始まっている。教育旅行に詳しい全日空総研(東京)の福原光男さん(64)は「震災学習は被災地の売り込みの要ではあるが、農作業や民泊など被災地以外でもできる体験学習のニーズも増えつつある」と変化の兆しを語る。
 釜石市では団体宿泊の供給不足を打開しようと、5年ぶりに民泊の掘り起こしを始める。「5年、10年先の交流人口を伸ばすには教育旅行の受け入れは有効だ」。将来の釜石ファン増加へ種をまこうと、市観光振興課の菊池公男課長が力を込める。
 釜石の宿泊需要の高止まりは、開催地の一つに選ばれた19年のラグビーワールドカップまで続くといわれる。復興の推進と交流人口の拡大。釜石市の二兎(にと)を追う取り組みが始まった。


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2016年06月06日月曜日


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