山形のニュース

<参院選争点を歩く>農業どこへ 募る不安

TPPなど大きな転換期を迎えた農業。農村部は先行きの見えない不安が充満している=寒河江市

 参院選(22日公示、7月10日投開票)では、東日本大震災からの復興や原子力政策の是非に加え、1次産業、少子高齢化、経済格差などの諸課題を巡り、政党や立候補予定者が論戦を繰り広げる。争点の断面を東北の選挙区の現場から報告する。

◎TPP 党略優先かすむ論戦

 農村を覆う不安が、党利党略のねじれにかすむ。環太平洋連携協定(TPP)の本質を問う論戦は、一向に聞こえてこない。

<表現に苦心>
 山形市内で5月15日にあった自民党山形県連による街頭演説。参院選山形選挙区(改選数1)に挑む新人月野薫は、TPP大筋合意に関する「黒塗り文書」などの政府対応を巡って「もう少し『優しい説明』があればと思う」と、慎重な言い回しで疑問を呈した。
 全農山形県本部副本部長だった月野。TPP反対の急先鋒(せんぽう)、農協グループの出身だ。自民は農村部に漂う不信感を和らげようと、あえて擁立に踏み切った。
 月野とともにマイクを握った県連会長の五輪相遠藤利明は「TPPには課題がある」と生産者への配慮をにじませつつ、「現場の声を反映させる人が必要だ」と理解を求めた。
 自民は「攻めの農業への転換」を掲げ、TPP大筋合意に突き進んだ。党方針をのみ込んだ月野。最前線の地方組織は、守り一辺倒の戦いを強いられる。
 野党統一候補として再起を目指す無所属元議員舟山康江は5月14日、山形市の事務所開きであいさつし、「安倍政権は現場の声を聞く耳を持っていない」とボルテージを上げた。
 舟山は農水省出身。民主党政権時代に農水政務官を務めた。反TPPの論客として鳴らし、2012年に交渉参加の検討を進めた党に反旗を翻して離党。13年は「みどりの風」(解散)から立候補し、落選した。
 今回、野党連合の屋台骨を支えるのは一度たもとを分かった民進だ。舟山は5月19日、山形市内での総決起大会で「3年前のことについておわびと反省をしている」と神妙に話した。
 野党共闘は安全保障関連法や改憲への反対で「大同」し、政策的な「小異」には目をつぶった。舟山は政権批判に多くの時間を割き、隔たりが見え隠れする農政論は影を潜める。

<冷たい視線>
 TPPを巡って政府は昨年12月、農林水産物生産額の影響は1300億〜2100億円減にとどまるとの試算を公表した。コメは「影響ゼロ」とされ、東北各地で異論がくすぶる。
 「民進党はTPPに賛成なのか、反対なのか。一枚岩でいけるのか」。米どころ、秋田選挙区(改選数1)で元議員松浦大悟を立てる民進代表の岡田克也は5月4日、大館市の視察で住民に問い詰められた。
 岡田は「他国との経済協定は基本的に必要だと思う。TPPは日本にとっていい中身なのか検証の必要があるが、資料は真っ黒なものしか出てこない」とかわさざるを得なかった。
 自民現職石井浩郎は5月14日、秋田市の事務所開きで「農業者が不安な思いをしているのは事実だ。与党や農協が知恵を出さなければならない」と強調した。支援に期待を寄せた秋田県農協政治連盟は早々と自主投票を決定。距離を置き、冷ややかな視線を送る。(敬称略)


2016年06月06日月曜日


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