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<適少社会>移民問題 真剣に議論を

[たんの・きよと]茨城県阿見町生まれ。一橋大大学院社会学研究科博士課程修了。首都大学東京准教授などを経て2014年から現職。著書に「国籍の境界を考える」など。49歳。

 東日本大震災で人口減が加速した岩手、宮城、福島の被災3県の暮らしを「ヨソモノ」の力が支える。震災前を上回る計3万5000人の外国人が住み、労働力不足を補う。500人を超える復興支援員が地域を飛び回る。外国人労働者と交流人口。それぞれの課題と今後の方向性について、国際労働力問題に詳しい首都大学東京の丹野清人教授に聞いた。

<首都大学東京教授丹野清人氏に聞く/外国人労働者、来日継続は思い上がり>
 急速な人口減少によって労働力不足に陥ることは20年も30年も前から分かっていたのに、政府は対策を打ち出さず定年延長などでごまかしてきた。若者が集まる東京ですら労働力が足りていない。被災地や地方ではより問題は深刻だ。
 日本人だけで足りない分を穴埋めしているのが外国人労働者で、2013年からわずか2年で20万人増え90万人を超えた。しかし、その6割は留学生のアルバイトなどで正規の労働者として迎えられていない。
 外国人労働者の認識は省庁で異なる。法務省は出入国に関する基本計画に単純労働を受け入れないと明記するが、厚生労働省は留学生のアルバイトなど単純労働を含めた雇用統計を発表している。両省で立場が異なるため、国としてきちんと議論できず対策もできていない。
 韓国や台湾は外国人を長期的な労働力として活用することを念頭に法整備した。賃金や職業選択など自国の労働者と同じ扱いをしている。日本は両国に学ぶべきだ。
 いつまでも安い労働力が日本に来てくれると考えるのは思い上がり。日本が国内総生産(GDP)を2割伸ばす間にベトナムやフィリピンは3倍伸ばしており、日本の高度経済成長期よりもはるかに発展のスピードが速い。いつ日本に外国人が来なくなってもおかしくない。
 技能実習制度はもろ刃の剣で、賃金の安い労働力を確保できる一方で、本当に技術を習得されると日本が競争力を失う。その典型が造船業。実習生を派遣した中国や韓国に追い抜かれてしまった。
 都内のスーパーに並ぶ国産野菜のほとんどを実は実習生が収穫している。日本の社会は制度に依存し過ぎている。都市部では姿が見えないから「実習生は不要」と批判するのは簡単だが、いなくなればわれわれの生活は混乱する。廃止するとしても段階を踏んで進めなければならない。
 合格率の低い看護師や介護福祉士の経済連携協定(EPA)による受け入れ施策は完全な失敗だ。家族と離れて5年頑張って結果が報われないのでは、誰も挑戦しなくなる。一定の人数を確保するための仕組みに変えないと機能しない。
 実習生や留学生に労働力を頼っても、根本的な人口減少対策の処方箋にはならない。最後は移民問題に突き当たる。日本にとって必要な労働力がどれくらいなのか正面から議論することが必要だ。


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2016年06月08日水曜日


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