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<適少社会>定住、年1%増で地域を維持

[ふじやま・こう]島根県益田市生まれ。広島大大学院社会科学研究科博士課程修了。島根県中山間地域研究センター研究員などを経て2013年から現職。著書に「田園回帰1%戦略」など。56歳。

 東日本大震災で人口減が加速した岩手、宮城、福島の被災3県の暮らしを「ヨソモノ」の力が支える。震災前を上回る計3万5000人の外国人が住み、労働力不足を補う。500人を超える復興支援員が地域を飛び回る。外国人労働者と交流人口。それぞれの課題と今後の方向性について、中山間地域の活性化策を研究する島根県立大連携大学院の藤山浩教授に聞いた。

<島根県立大連携大学院教授藤山浩氏に聞く/欲しい人材まず伝えて>
 何人の観光客が来たという薄っぺらい交流人口の議論で終わらせてはいけない。訪れる人と地元の人との関わりに深みがあれば、継続的な付き合いの素地になる。重要なのは滞在の長さや時間の濃密さ、リピート回数だ。食べ物でも土産でも、その土地ならではのもので勝負しないと来てもらえなくなる。
 ボランティアや復興支援員、地域おこし協力隊に加わる若者は、活動を通して自分が必要とされていると自覚し、自らの価値に気付く。そこに意義を感じるのではないか。
 都会の公園は住民が何もしなくても行政がきれいに整備するが、被災地をはじめ田舎はそうはいかない。草刈りをしたり、掃除をしたり、住民が少しずつ地域の風景をつくり上げていく。組織の一員になることに都会では得られない価値を見いだしているのだと思う。
 島根県では、都市住民が農山漁村に向かう「田園回帰」の流れが2000年代前半から海士(あま)町(ちょう)などの島しょ部や半島で始まった。全国では東日本大震災を境に大きな波に変わった。
 安定した仕事もなく震災にもろい都市の生活に、若者が魅力を感じなくなり、長年の人口流出で自信を奪われていた田舎の人が、災害時でも地域資源でやりくりできる暮らしの豊かさを再認識した。
 中国や四国では1960年代に過疎が始まり、高齢化が進んだ。自治体も早くから対策に取り組んできた。そのため田園回帰の流れは東北、北海道で弱い西高東低になっている。
 人口減少対策には、定住人口を毎年1%ずつ増やす「1%戦略」が有効だ。島根県の中山間地の全227地区を調べたが、年1%増やせばコミュニティーを維持できることが分かった。
 国土交通省が全国の山間地を対象にした調査でも同様のデータが得られた。100人前後の集落なら3、4年に親子世帯1組を移住させればよい。
 被災地の場合は、地域から出ていった人たちを速やかに取り戻すことも重要だ。1%戦略と同時並行で取り組んでもらいたい。
 欲しい人材を選ばない地域は移住希望者からも絶対に選ばれない。「誰でもいいから来て」ではなく「こういう人に来てほしい」とはっきり伝えることが肝要だ。
 移住後のトラブルの8割は「その話は説明で聞いていない」というもの。地域の行事や将来の目標、過去の失敗や成功などをありのままに伝えれば、希望者と地域が互いに納得した形の定住につながる。


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2016年06月08日水曜日


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