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<特定失踪者>亡き父の短歌 いつか妹の手に

「いもうと」に収めた短歌を声に出して振り返る天内さん

 北朝鮮による拉致の可能性が濃厚な木村かをるさん=当時(21)=の姉天内みどりさん(83)=青森県八戸市=が、歌集「いもうと」を出版した。娘を思う父の歌を収め、「いつか本を妹の手に届けたい」と願う。
 16年前に97歳で他界した父一栄さんの手帳に短歌6首が書き残されていたことが昨年春に分かり、本にして残そうと考えた。<一言の遺言もなく消えし吾子(あこ)あきらめかねて一人涙す>など、いずれも親の無念さを詠んだものばかりだった。
 かをるさんは秋田市の看護学校に通っていた1960年2月、寮から外出し行方不明になった。父は知らせを受けて天内さんと2人で秋田に向かった3月に短歌を記したが、その存在は家族にも伝えなかった。
 天内さんは「本を出すことで100分の1の可能性でも、父の心を妹に伝えたいと思った」と振り返る。
 本は冒頭に父の短歌を据え、天内さん自選の515首をまとめた。<「たづね人」のビラ貼りてゆく父の背に積もる白雪いまも目に顕(た)つ>のように、家族愛がテーマになっている。
 天内さんは、北朝鮮が今年2月に全ての日本人の再調査を中止した事実を冷静に受け止めつつ、生死が分からず自殺を疑っていた親をしのんで「北朝鮮で生きていると報告したい」と希望を持ち続けている。
 満州から引き揚げ、平壌で終戦を迎えた5歳違いの姉妹。天内さんは家族で帰国するまで約1年を要した平壌での生活で、妹と多くの苦労を分かち合った。
 「いつか北朝鮮に妹を迎えに行き、昔の平壌の思い出話をしながら日本に帰るのが私の夢なの」
 歌集は近代文芸社刊、1944円。


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2016年06月10日金曜日


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