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<避難解除の先に>解体停滞 住民に焦り

自宅解体工事の初日、室内から外を眺める原さん=8日、南相馬市小高区

◎福島原発事故の現場(中)住まい

 「一日も早く故郷で生活を」。住民が帰還を切望しても、肝心の住宅整備がなかなか進まない。
 東京電力福島第1原発事故による避難が5年以上に及び、原発被災地にある民家の傷みは激しい。建て直しを計画する住民は少なくないが、環境省による荒廃家屋の解体が滞っている。

<2割満たず>
 12日に避難指示が解除された福島県葛尾村の解体申請は約350件。2015年度内に終了したのは2割に満たない。入札不調というトラブルもあり、本年度分の工事はいまだ本格化していない。
 しびれを切らして民間業者に自分で依頼する住民が出ている。
 遠藤英徳さん(74)はその一人。昨年夏に申請したが、一向に工事が始まる気配がない。「新居の完成を先送りしたくない」。今年5月、自主解体に踏み切った。
 福島県三春町の仮設住宅に妻と避難している。「狭い部屋にいたのでは体がもたなくなってしまう。早く帰りたいが、年内の自宅再建は無理だ」。自宅敷地は既に更地になり、地鎮祭を終えた。遠藤さんは引っ越しの日を待ちわびる。
 7月に解除される福島県南相馬市の現状も厳しい。1000件以上の解体工事が控え、年度内に完了できるかは不透明だ。環境省は地域再生への影響を避けるため、帰還予定者の物件を優先して着工している。
 国の担当者は「家屋をネットで覆って汚染物質の拡散を防ぐなど、避難区域の工事は通常より手間を掛けている。安全に配慮しつつ円滑に進める工夫をしたい」と話す。

<多忙な業者>
 住環境を巡る課題は他にもある。新居建設や大規模修繕の依頼が殺到し、業者がさばき切れない事態に陥っている。避難区域では「『年単位で待ってほしい』と言われた」「工事が中断した」といった悲鳴があふれる。
 南相馬市小高区の原敏則さん(62)は、7月に自宅の再建を始める。もともと地元業者への注文を考えていたが、多忙ぶりを考慮して方針を転換。仙台市の大手ハウスメーカーに解体、建設をセットで頼むことにした。
 原発事故時に1人だった孫が4人に増えた。2部屋しかない仮設住宅では親族を迎えられない。原さんは「子や孫がくつろげるスペースを確保したかった。来年の正月は新居で迎えられそうだ」と語る。
 住まいなしに被災者の生活再建はおぼつかない。南相馬市の建築業者の一人は「東京五輪の関連工事や熊本地震の復興が本格化すれば、人手や資材はさらに乏しくなる。今後、建築事情は厳しさを増すだろう」とみる。


2016年06月14日火曜日


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