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<内陸地震8年>植生回復 薄れる記憶

岩手・宮城内陸地震でできた荒砥沢崩落地。茶色い山肌が見える崖の上が冠頭部で、左下が荒砥沢ダム。国内最大級の地滑りは、植生の回復や治山工事により発災当時の荒々しさは姿を消しつつある。崩落地内には現在、工事用道路が通る=2016年6月3日

 岩手・宮城内陸地震は14日で発生から丸8年を迎えた。マグニチュード(M)7.2の地震が発生、激震に見舞われた宮城県栗原市の栗駒山麓では大規模な地滑りや土石流が相次ぎ、緑まぶしい初夏の風景を一変させた。23人が犠牲になった大規模災害だったが、東日本大震災の発生などにより、内陸地震の記憶は地元でさえ薄れつつある。内陸地震をいかにして後世に伝えるか。市は地滑りによる大規模崩落地を中核的地形と位置付け、栗駒山麓ジオパークとして防災教育に活用するなど伝承活動に取り組んでいる。

◎見学ポイント高所に移動検討/災害現場より俯瞰的に

 むき出しになった茶色の山肌、寸断されてアスファルトの断面をさらす市道、引きちぎられ垂れ下がる白いガードレール。内陸地震で国内最大級の地滑りが発生した荒砥沢崩落地=?=は足をすくませる迫力で山地災害のすさまじさを物語った。
 こんな大規模災害現場は植生の回復や治山工事により、発災当時の荒々しさが薄れつつある。
 地滑りの衝撃で全体的に斜めに傾いていた崩落地内の林は、年月の経過とともに真っすぐになった。「冠頭部」と呼ばれる崩落地を一望する見学ポイントの崖(高さ最大150メートル)には草木が生い茂り、視界を遮り始めた。
 「これまでと同じ手法では、内陸地震の災害規模を後世に伝えられない」と市ジオパーク推進室の担当者は危機感を強める。
 東北森林管理局が昨年2月、「崩落地内は一定の管理下で部分的に入山可能」との見解を示したことを受け、市は地滑りした山塊(移動体)内部への立ち入りなどに向けて関係機関や有識者らによる話し合いを近く始める。安全性を確保した上で、新たな視点で内陸地震を伝える方針だ。
 市は見学ポイントを現地点より20メートルほど高い場所に移動させたい考え。荒砥沢崩落地と荒砥沢ダムをより俯瞰(ふかん)的にとらえられるようにする。移動体内にも入り、残されている道路やガードレールを見学できるよう手段を講じる方針だ。
 担当者は「東日本大震災や御嶽山の噴火など大きな自然災害が次々に発生したことで、内陸地震の記憶は薄れている。時代を超えて人々に伝えられる手段を構築したい」と口元を引き締める。

<荒砥沢崩落地>栗原市栗駒に位置する。幅900メートル、斜面長1300メートル、面積98ヘクタールに及ぶ地滑りによる土砂量は6700万立方メートル(東京ドーム54杯分)。主に火山灰が堆積したシルト層を「滑り面」に地滑りが起きた。滑り面の傾斜は1〜2度と非常に緩かった。崩落した土砂のうち約150万立方メートルが荒砥沢ダムに流れ込み、貯水容量を減少させたため、新たに同市築館に調整池が造られた。

<栗駒山麓ジオパーク>地形や地質を生かした自然公園で、範囲は栗原市全域の約800平方キロ。山岳部の栗駒山(1626メートル)から、平野部に位置するラムサール条約登録湿地の伊豆沼・内沼までをカバーする。昨年9月、専門家らでつくる日本ジオパーク委員会の認定を受けた。


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2016年06月14日火曜日


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