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<避難解除の先に>住民離散 維持は困難

避難指示解除を巡って開かれた南相馬市の区長会。行政区再編の方針が示された=5月13日

◎福島原発事故の現場(下)共同体

 人口減という重い現実を前に、住民自治の基盤がぐらついている。
 「行政区の見直しを進めたい」
 福島県南相馬市の桜井勝延市長が5月、小高区など避難区域の行政区長を集めた会議で提案した。後に7月12日と決まる避難指示解除の議論が大詰めを迎えていた。

<危機を共有>
 会場から異論はない。東京電力福島第1原発事故から既に5年がたっている。「共同体の維持は難しいだろう」。区長らも危機感を共有していた。
 市内では計47行政区に避難区域が設定されている。市が小高区民を対象に実施したアンケートでは、帰還世帯が20に満たない行政区も少なくない。深刻な津波被害を受けた沿岸部はもちろん、内陸部も住民流出が加速している。
 小高区の山間部にある角間沢行政区。37戸のうち避難先から戻るのは最大でも10戸程度とみられている。
 「小さい集落だけど、まとまりがあってね」。住民の谷沢里さん(69)が懐かしむ。栃木県で避難生活を続けながら、月の半分程度を自宅で過ごしている。
 行政区の住民は深い地縁で結ばれてきた。地域行事の実施や集会所の管理にとどまらず、道路の草刈り、水路清掃といった共同作業もこなしてきた。活動を続けるには、どうしても一定の規模が必要となる。
 地域の縮小を見据え、角間沢は今後、負担の大きい草刈りを業者に委託することにしている。支払いには行政区で受け取った賠償金を充てる算段だ。「戻るのは高齢者が中心。仕方ない」。谷沢さんが声を落とした。
 南相馬市は地元へのヒアリングなどを経て、新たな区割りを進める考え。統廃合となれば、山林など共有財産の扱いも焦点となる。
 区長の一人は「登記上の名義はわれわれの先祖のまま。海外在住の相続人もおり、処分もできない」と戸惑う。

<対応に限界>
 共同体存続への不安は、一足先に避難指示が解除された福島県葛尾村でも聞かれる。広谷地行政区の渡辺隆区長(72)は「28世帯の住民のうち戻るのは5分の1程度。広い地域での作業はこなせない」と嘆く。
 急速な地域の変化に、自主防災の主力となる消防団も揺れている。
 南相馬市小高区では、かつて約360人が団員として活躍していた。原発事故後に近隣自治体などに移住する若手が相次ぎ、非常時に招集できるのは80人程度にとどまるという。
 「限られた人員では大災害時の対応に限界がある。技術伝承も難しい」。小高区で分団長を務める道中内好信さん(63)が、組織の行方を危ぶんだ。


2016年06月15日水曜日


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