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<参院選>痛み分かち合う政治を

◎報道部長 木村正祥

 新緑に包まれた山あいの道を行くと、黒々としたピラミッドが現れる。東京電力福島第1原発事故に伴う避難区域が残る福島県。豊かな農地は、除染廃棄物の仮置き場に姿を変えた。
 今月12日、帰還困難区域を除き避難指示が解除された葛尾村には仮置き場が31カ所。1トン入る黒い袋が40万個以上置かれている。第1原発近くに建設される中間貯蔵施設に運ばれる予定だが、用地は全体の2.3%しか確保できていない。
 参院選を前に、東北各地を遊説した安倍晋三首相が強調した。「震災前より発展した東北をつくるために力を尽くす」「アベノミクスは失敗していない。道半ばだ。やるべきことはこの道を力強く前に進めることだ」
 震災と原発事故から5年3カ月。この間、政権を奪い返した安倍首相が、復興加速と経済再生には「この道しかない」と位置付けるのがアベノミクスだ。
 唯一絶対と自賛する政策をどう受け止めるか。
 遅々として進まない原発事故の後始末。宮城、岩手、福島3県の避難者はなお約16万人。プレハブ仮設住宅に6万人以上とどまる。
 首相は「アベノミクスの加速か後戻りか」を参院選の最大の争点に据えるが、そもそも被災地はその成果を享受しているだろうか。「ほかに道はない」と力説する首相と被災地の目線が交わっているだろうか。
 消費税率10%への引き上げが再び延期された。首相は1年半前に「再延期はない」と言い切った発言を撤回し、内需を腰折れさせないための「新しい判断だ」と説明した。
 社会保障の充実と税の一体改革を巡る4年前の民主、自民、公明の3党合意を破棄したことになる。延期は、民主が母体の民進党もアベノミクスの失敗を理由に提起した。このままでは将来世代の不安と負担は増大するばかりだ。各党は確たる改革像を示すべきだ。
 震災は地域のコミュニティーを破壊した。喪失の痛みを分かち合ったからこそ、他者を思いやる気持ちが生まれよう。東北から熊本へ。自発的な支援の動きはその延長線にあり、同じ目線で復興を見据える。古里の復活へ自ら歩みを進めなければならない。震災を経験したわれわれは、その意を強くしている。
 有権者に18歳と19歳が加わった。震災の記憶が鮮明なはずだ。離郷を強いられている人も多い。政治の便法に惑わされてはならない。臆することはない。本音を真正面から政治にぶつけてほしい。


2016年06月22日水曜日


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