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<論点聞く>TPP 影響額試算の根拠示せ

三輪泰史(みわ・やすふみ)東大大学院修了。04年日本総合研究所入社。専門は農業再生による地域活性化、農業ビジネス戦略など。36歳。広島県出身。

 参院選(7月10日投開票)では、安倍政権の経済政策「アベノミクス」や憲法問題、環太平洋連携協定(TPP)など多岐にわたる政策課題が問われる。有権者は何を基軸に選択すべきか。論戦の焦点を専門家に聞いた。

◎参院選(1)TPP/日本総合研究所創発戦略センターシニアスペシャリスト 三輪泰史氏

 −昨年大筋合意したTPPでは何が争点になりますか。
 「国際貿易交渉としては国益をうまく守った。選挙戦ではTPPをどう着地させるかが論点となる。現時点では国際合意を蹴ることは考えられない」
 −農林水産物では8割の品目で関税がなくなりました。コメなど重要5項目を関税撤廃対象外とする国会決議のうち、牛肉・豚肉は関税が大きく引き下げられます。
 「一歩も譲らないことを約束したため、農業者には大幅譲歩と受け止められる。国内対策は国会決議を含めて戦略ミスがあった。絶対に守るということは国際交渉ではあり得ない」
          ◇         ◆         ◇
 −政府が昨年示したTPP対策は十分ですか。
 「米価下落への対応もTPPと並行して考える必要があったが先送りされた。畜産はTPPで一定の影響が出る。政府は牛・豚肉の経営安定対策の赤字補填(ほてん)割合引き上げなどを打ち出したが不十分だ。付加価値向上やコスト低減を徹底し、関税引き下げに対抗する競争力を付けないといけない」
 「耕畜連携や飼料用米はもっとてこ入れができる。主食用米から飼料用米への転換を促す補助金には『形を変えた減反』との批判もある。だが、畜産物を国産飼料で育て付加価値を高められれば、一つの補助金で多くの効果が上げられる」
 −政府が昨年示したTPPによる影響額試算に、自治体から信頼性への疑念の声が上がっています。
 「(農業生産額3兆円減とした)合意前の試算と、(1300億〜2100億円減とした)合意後の試算があまりにぶれている。非常に恣意(しい)的に感じる。前提条件によって影響額は変えられる。農水省は合意前は『影響あり』、今回は批准を進めるため『影響なし』と言いたいがための前提を置いた。細かい交渉過程は出せなくても、試算の根拠は説明しないといけない」
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 −今後議論すべきことは何ですか。
 「TPPの影響度の評価と対応策について、重要なポイントをクローズアップして審議すべきだ。政府の影響試算に書かれていないことや問題点を見つけて議論し、補うことも必要だ。注意すべきなのはイデオロギー対決にしないこと。イエス、ノーで政争の具にしやすい。各論の問題点を明確にすることが農業者の利益につながる」
 −政府は「農産物輸出額年間1兆円」を2020年度から1年前倒して達成する見通しを示しました。
 「現状では日本酒やみそ・しょうゆ、真珠が多く、生鮮品はごくわずか。農家がTPPで成長するとは言えない。現状は国内向けを海外に流しているが、輸出用商品を作るべきだ。世界的ブランドのフランスワインですら日本人の好みに合わせた仕様にしている」(聞き手は東京支社・小木曽崇)


2016年06月26日日曜日


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