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<その先へ>水田放牧 実現へ前進

水田放牧の試験を計画する山田猛史さん(右)と豊さん=福島市飯野町

◎畜産農家 山田猛史さん=福島県飯舘村

 東京電力福島第1原発事故で全村避難が続く福島県飯舘村で、除染後の水田を広い放牧地に活用するという地元農家の夢が実現する。関根松塚地区の山田猛史さん(67)の着想を、村が営農再開の試験事業として支援。今年秋から自身の水田に牧草を育て、来春にも避難先で飼っている和牛を移し放牧試験を始める。「ぜひ成功させ、将来は村中で畜産を復活させたい」と復興への一歩に希望を膨らませる。
 「水田放牧」と山田さんは呼ぶ。村では農地除染が進み、避難指示解除が来年3月末に迫る。だが、厳しい風評が村民の帰農意欲を妨げ、42世帯の関根松塚でも稲作再開の希望者はいない。打開策としてたどり着いたのが「集落の水田を遊休農地にさせぬよう広い放牧地にする」構想だった。昨年3月と10月の「その先へ」で紹介された。

 試験を行うのは、除染が終わった自宅近くの水田2ヘクタール。耕して水はけを取り戻し、地力回復の堆肥をまく作業をした後、9月に牧草の種をまく。放射性物質濃度などを調査をした上で、来年5月ごろから放牧試験を始める計画だ。福島県畜産研究所も参加する。
 山田さんは、原発事故前に手掛けていた和牛繁殖を2014年秋、避難先の福島市飯野町で再開。現在飼う38頭のうち、6頭を試験地に放したい考えだ。
 構想実現の最大の課題だったのが、水田を仕切る「あぜ」。牧野づくりの支障になる上、農地の一部とみなされず国の除染対象外とされるため、安全確保上も撤去の必要があった。
 山田さんは昨年10月、地元を支援するNPO法人ふくしま再生の会(田尾陽一理事長)と、あぜを機械で削って現場に埋める実験を行い、周辺の環境に影響が出ないことを確かめた。放牧試験でも同様に撤去、埋設する手法を試す。

 関根松塚は村内でも放射線量が低い地区の一つで、大半の世帯が帰還の意向だ。「仲間の有志が花のハウス栽培を計画しているが、畜産復活を目指すのは自分一人。試験が成功したら、集落の水田を借りて本格的に放牧地を増やす。新しい担い手の受け皿にもなる畜産団地を、水田放牧の方式で村に広めたい」
 原発事故後、京都市の大手牛肉販売会社で修行していた後継者の三男豊さん(33)が3月、家族と共に福島市に戻った。山田さんの牧舎に通って一緒に働いている。「京都で学んだ知識を生かす仕事を見つけ、父の夢とつながれたらいい」と豊さんも夢を語る。(寺島英弥)


関連ページ: 福島 社会 その先へ

2016年06月27日月曜日


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