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<論点聞く>原発事故リスク 市民社会が統制

寿楽浩太(じゅらく・こうた)東大大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。東大大学院特任助教などを経て12年から現職。専門は科学技術社会学。36歳。千葉市出身。

 参院選(7月10日投開票)では、安倍政権の経済政策「アベノミクス」や憲法問題、環太平洋連携協定(TPP)など多岐にわたる政策課題が問われる。有権者は何を基軸に選択すべきか。論戦の焦点を専門家に聞いた。

◎参院選(2)原子力政策/東京電機大助教 寿楽浩太氏

 −東京電力福島第1原発事故後も原発を利用し続ける政策について、賛否が割れています。
 「原発事故の経験が適切に反映されているのか、どんな議論を経て今の政策が決まったのかが、振り返っても判然としない。気がつけば現状維持に落ち着いてしまった感がある。衝撃的な事故を踏まえ、本来は社会全体で議論を尽くし、その合意に基づいた方針を決めるべきだった」

 −政府は昨年決定した2030年の電源構成に関する見通しで、原発の比率を20〜22%としました。
 「国民が果たして『自分たちで決めた目標』と思えるだろうか。政府や専門家が決めたこと、という状況になっていないか。政治の側に、国民参加型のプロセスを通じて政策を作り上げる努力が不足している」
          ◇         ◆         ◇
 −原発再稼働への批判も根強いままです。
 「原子力規制委員会の新規制基準に基づく審査が以前より厳しいのは分かる。それでも稼働して大丈夫なのか、と疑問を感じている人が少なくない。政府は『世界で最も厳しい基準』と主張するが、クリアすることが社会が期待する安全にどう関わるのか、説明が不十分だ」
 「原発は民間企業の事業として運営されている。経済性と安全性の確保には、相いれないトレード・オフの面もあり、国民の側には経済性が優先されるのではないか、という不安がある。それを払拭(ふっしょく)できるような信頼を構築できるのかも問われる」
 −規制委は原発について「絶対安全とは言わない」との見解を示しています。
 「事故リスクはゼロにはならないが、社会が許容できる水準まで下げる、という議論や判断は必要だ。『リスクは残る』とばかり言うのは責任逃れとも言える。再稼働を認めるなら、『許容できない重大リスクは確実に排除した』と保証し、その根拠を具体的に説明してほしい」
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 −どのような視点で原子力政策を考えるべきでしょうか。
 「原発にはいろいろな利点もあるが、特別な性質のリスクもある。それをどう判断するかが問われている。福島の事故以前は、専門家にその判断を頼りすぎていた。最終的には市民社会が手綱を握って統制すべきだ」
 「原子力の利用を続けるにも、やめるにも困難な課題があるが、各論にこだわってばかりでは解決につながらない。どういう社会に生きたいのか、どんな価値を大事にするのかを議論し、大きな方向性を示すことが何よりも大切だ」
(聞き手は東京支社・小沢邦嘉)


2016年06月27日月曜日


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