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<参院選かすむ政治>子のため条件譲れず

有効求人倍率が高い今でも、多くの求職者が相談に訪れる=24日、仙台市宮城野区のハローワーク仙台

◎生活の現場から/シングルマザーの就活 数値と現実に隔たり

 黒山の人だかりに言葉を失った。
 シングルマザーの横山明日香さん(30)=仙台市泉区=は3月中旬、雇用保険の給付手続きのためハローワーク仙台(仙台市宮城野区)を訪れた。職を求める人であふれかえり、自分と同じ年頃の女性も多い。
 「この人たちが私の就活のライバルになるのか」
 手続きが終わるまでの約4時間、娘の顔を何度も見詰めた。
 契約社員として8年間勤めた栃木県の大型家電量販店を2月に辞めた。「正社員登用あり」の条件に引かれて働き始めたが結局、ずっと契約社員のまま。多くの同僚も同じだった。

 27歳で未婚の母になった。その後は午後5時半で退勤できる育児時短勤務を利用したが、午後9時まで残業することがあった。
 自分なりに頑張っていたつもりだが、職場の空気は冷たかった。「(時短勤務で)周りに迷惑掛けてるんだから、しっかりやってよ」。上司の言葉が胸に刺さった。
 土日の出勤時は近くに住むシングルマザーの妹に娘を預け、後ろ髪を引かれる思いで職場へ向かった。
 「ママ、抱っこして、抱っこ」。迎えに行くと、決まってぐずる娘にいら立った。娘が精いっぱい抑え込んでいた寂しさの表現だと気付く余裕すら、失っていた。
 仕事と育児の板挟みで疲れていたとき、上司に「このままでは契約更新できない」と告げられた。「契約を打ち切られて辞めるのはあまりに惨めだ。娘と一緒に過ごす時間も欲しい」。契約満了を待たず、自分から去った。

 5月から仙台の実家で暮らす。月に数回、ハローワークや市の母子家庭相談支援センターに足を運ぶ。
 娘のことを考えると「土日祝日休み」「正社員」の条件は譲れない。興味のあるIT業界やデザイン関係の仕事に就きたいが、自分の希望は後回しでいい。
 今月中旬、ハローワークを通じて市内の企業から「営業職でどうか」と打診された。契約社員で3カ月働けば正社員にしてくれるという。土曜出勤があるのが引っ掛かり、まだ返事をしていない。
 宮城県の4月の有効求人倍率は1.47倍。確かに政府が言う「1人の求職者に一つ以上の仕事がある状況」ではある。「えり好みしなければ仕事はあるのかもしれないけど」。数値と現実が、かみ合わない。
 高い求人倍率がずっと続くとは限らない。ハローワークで見た人だかりの光景が時折、頭をよぎる。
 「このまま就職できなかったらどうしよう。娘と路頭に迷っちゃうのかな」
(報道部・関根梢)


2016年06月28日火曜日


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